東京都町田市と神奈川県相模原市を中心とする商圏で、地域密着の家電販売店を57年間経営する。お客の要望にきめ細かく応え、安売りではなく「高い価格」で買ってもらうスタイルを続ける。コロナ禍の中でも粗利率は44%超と高水準を維持している。

ヤマグチの店舗(東京都町田市)。お客の自宅から店舗への送迎サービスもする(写真/都築雅人)
ヤマグチの店舗(東京都町田市)。お客の自宅から店舗への送迎サービスもする(写真/都築雅人)
ヤマグチは地域の顧客への訪問営業を柱に、安売りしない「ヤマグチ価格」と手厚いサービスで家電を販売する店として知られます。

 新型コロナの感染拡大以降、家電業界はいわゆる巣ごもり需要の増加や、その反動による販売不振、またネットで家電を買うEC市場の拡大もありました。ヤマグチではどのような状況でしたか。

山口:コロナではいろいろ制限がありましたが、感染防止対策はした上で、基本は今までと同じ対応、同じ動きをするように社員には指示しました。

 もちろん「こんなときだから家の中には入らないでほしい」というお客様に玄関先で対応したという例はいくつかありましたが、そのほかは特に聞いていません。店舗やオフィスでも、感染防止対策は万全にして、同じように行動しました。

 ただ、うちは会員になっているお客様向けにいろいろなイベントを開催していますが、来場率は以前より下がっていますし、内容によっては開催できないものもあります。例えば年2回の日帰りバスツアーは中止しました。

 その影響かどうかは分かりませんが、全体的に買い控え感はあります。売り上げでいうと、コロナ禍以降は年に2~3%、3年で10%落ちています。

 ただ、売り上げが下がっても粗利率は下げていません。2022年9月決算の段階で44・2%です。

ここ数年は40%以上の粗利率を維持しています。

山口:25〜26年前、この近辺に家電量販店が続々と進出してきて、売り上げがじわじわ下がってきた。そこから、売り上げより粗利率を上げようという作戦で、当時の26~27%から上げてきたわけです。

 6年前、パナソニックの販売店が集まって共同仕入れ会社をつくりました。現在は東京、神奈川、山梨の12店のグループで経営改善に取り組んでいます。「安くしたからって売れるものではない。しっかり値付けして買ってもらって相応のサービスをしよう、粗利率は40%取ろう」と言い続け、実際にその中の1店は45%を超えました。

ヤマグチよりも高い粗利率を出せる地域店になったんですね。

山口:以前は「安くしなければ売れない」と思っていた店も、お客様をこまめに訪問し、しっかりした値段で売れるようになりました。

山口 勉(やまぐち・つとむ)
山口 勉(やまぐち・つとむ)
1942年東京生まれ。65年にパナソニック系列の電器店「でんかのヤマグチ」を創業。売り上げの7~8割を会員顧客への訪問営業から上げ、粗利率は40%以上で黒字経営を続ける

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