粉飾に走って破滅した経営者を今後も対岸の火事と済ませられるだろうか。昨年、中小企業を苦しめた新型コロナウイルスが、再び威力を増している。長期戦が予想され、魔が差してもおかしくない。粉飾は、会社の息の根を確実に止める。良かれと思った苦渋の決断が、最悪の結果を招くのだ。実際に手を染めた経営者たちの肉声から、その恐ろしさを感じ取ってほしい。

(写真:PIXTA)

<特集全体の目次>
・粉飾経験者の独白(1)「在庫を操作した罪悪感が、頭にこびりついて離れない」
・コロナ、地銀再編、経営者の高齢化 一気に高まる粉飾決算リスク
・粉飾経験者の独白(2)「しなければよかった、とは今でも思わない」
・粉飾決算、実は銀行は知っている?
・粉飾経験者の独白(3)「そそのかしてきた金融機関。私は大義のために手を汚した」
・会社を守る最後の手段は本当に粉飾経営ですか?


 衝撃的な告白だ。数字操作は金融機関から暗に促されたという。「粉飾は、中小企業を含む社会の中でお金を回すための必要悪になり得る」。そう言い切る製造業経営者の話を聞いて、あなたは何を考えるだろうか。

責任をいずれ取ることになる、そう覚悟した

 「山田社長(仮)、これは経費ではなくて資産性のものではありませんか。よく見たほうがいいですよ」。数十年続けた粉飾経営のきっかけは、銀行からの要請に等しい働きかけでした。

 当時の私は製造業の会社を経営していて、10を超える金融機関から融資を受けていました。そのほぼすべての営業担当者から、程度の差はあれ、決算を粉飾するよう、暗に求められたのです。もちろん、「決算を粉飾してほしい」とは言ってきません。「もっと利益が出ているはずですよね。仕訳が間違っているのでは?」「この数字はもっと減る可能性はありませんかね」。こうした言い方が彼らの常とう句でした。融資を受ける際に提出する事業計画書も、営業担当者が勝手に作って「はんこをここに押してください」と言ってくる始末です。

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