粉飾に走って破滅した経営者を今後も対岸の火事と済ませられるだろうか。昨年、中小企業を苦しめた新型コロナウイルスが、再び威力を増している。長期戦が予想され、魔が差してもおかしくない。粉飾は、会社の息の根を確実に止める。良かれと思った苦渋の決断が、最悪の結果を招くのだ。実際に手を染めた経営者たちの肉声から、その恐ろしさを感じ取ってほしい。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

<特集全体の目次>
・粉飾経験者の独白(1)「在庫を操作した罪悪感が、頭にこびりついて離れない」
・コロナ、地銀再編、高齢化……これから一気に高まる粉飾決算リスク
・粉飾経験者の独白(2)「『しなければよかった』とは今でも思わない」
・粉飾決算、実は銀行は知っている?
・粉飾経験者の独白(3)「そそのかしてきた金融機関。私は大義のために喜んで手を汚した」
・会社を守る最後の手段は、本当に粉飾経営ですか?


 粉飾は麻薬によく例えられる。一度始めるとやめられなくなるからだ。事の重大さに気づいた頃には、破綻という結末に向かって加速度的に進んでいる。会社の成長という健全な欲望を、粉飾で膨らませたサービス業経営者の独白。

取り返せないレベルまでやり過ぎた
取り返せないレベルまでやり過ぎた

 7年にわたって続けた粉飾経営は、厳しくなった資金繰りによる経営破綻で幕を閉じました。決算書を粉飾して金融機関から融資を受ける。重大なコンプライアンス違反だと分かっていますし、関係者には申し訳なく思っています。

 ただ、「取り返せないレベルまで粉飾してしまった」という後悔はあっても、「粉飾しなければよかった」とは今でも思っていません。翌期以降で取り返せる程度の粉飾であれば、企業として生き残りをかけたり、成長したりするためにはやむを得ない。これが経営者としての私の本音です。

 粉飾のきっかけは営業利益の赤字転落です。黒字が続くサービス業の会社でしたが、その期は売上高数億円に対して、数百万円レベルの赤字になりそうだと分かりました。

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