<span class="fontBold">みなみ・けいた</span><br>1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
みなみ・けいた
1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
『存在の耐えられない軽さ』
著者 : ミラン・クンデラ
訳者 : 千野栄一
出版社 : 集英社
価格 : 902円(10%税込み)

 今回ご紹介するのは、ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』という小説です。ジャンルを問わず今まで読んだ中で、最も印象に残っている大切な本を挙げよ、と問われれば、それはこの1冊です。

 舞台は1968年のチェコスロバキア。主人公の1人で、優秀な外科医のトマーシュは、前妻と離婚し奔放な性生活を送るプレイボーイです。彼は1人の女性との規範的な関係を意図的に避けていましたが、たまたま出向いた田舎町でウエートレスとして働くテレザと恋に落ち、婚姻関係を結びます。しかしその後もトマーシュの浮気癖は直らず、特に恋人の1人である画家のサビナとは友情にも似た強い関係を維持していました。テレザは嫉妬に悩み、悪夢を見るようになります。

 この3人の関係を軸として、同じ年に起こった「プラハの春」(チェコスロバキアの改革運動)と、それに続くソ連軍の介入に彼らが翻弄され、人生の選択に悩み苦しむ様が描かれていきます。

選択の軽重は主観でしかない

 ジャンルでくくれば恋愛小説ですが、描かれるのは単なるロマンスではありません。極論すれば、この小説の本質はストーリーそのものにはありません。本質は、作中でクンデラ本人が語るように、人生にある抽象的な「重さ」と「軽さ」に関しての問いかけです。その手段として物語のかたちをとっているだけだと捉えられます。

 作中では、主人公たちの心中が「重さ」と「軽さ」に分類され吟味されます。今回この作品を取り上げ、経営に通じる観点として考えたいのは、選択にまつわる「重み」です。物語の中でトマーシュは、テレザと出会い生活を共にするようになった後「何が自分にテレザを選ばせたのか」について考えます。そして、2人の出会いはあまたの偶然が重なった結果であり、テレザとの生活がそれ以外に数限りなくあった可能性の1つでしかないという「軽さ」に気づきます。

 一方のテレザは、偶然が重なった事実にこそ運命的な意味を見いだし、トマーシュとの出会いと生活に必然性という「重さ」を感じるのです。同一の意思決定が、主観的な見方によって「重い」ものにも「軽い」ものにもなり得ます。しかし、現実に私たちが行う選択とは、客観的には「耐えられないくらい軽い」ものです。現実は一度きりであり、異なる選択肢を選んだ場合の結果を確かめて比較することはできません。

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