全社共通のマニュアル

 2003年に浅野社長がトップに就任すると、生産現場で培ったノウハウを営業や販売の部門にも持ち込んだ。

 社内は当時、縦割り組織から起きるセクショナリズムが蔓延していた。浅野社長が生産現場で経験したケースと同じく、営業、販売、設計といった担当者ごとの属人化もひどかった。

 顧客の相談に応対できる人が限られているため、来客が多い週末は特定の社員に業務が集中する。お客を長時間待たせ、しびれを切らしたお客が帰ってしまうことが常態化していた。

 そこで浅野社長が取り組んだのが「多能職化」だ。かつて生産現場で採用した多能工化を営業や販売の部門などにも取り入れ、1人の社員が複数の役割を担える仕組みを整えることにした。

 まず、実行したのがマニュアルづくりだ。「すべての部署で使える共通マニュアルを整備し、全社員の多能職化を進めた」(浅野社長)。

 作成に向けて、各部門の業務内容をすべて洗い出し、1冊にまとめた。挨拶や接客方法などの基本マナーから、レジの入力方法、お客の個別注文に応えるためのCAD(コンピューターによる設計)の使い方まで、社員が身につけておくべき事柄をまとめた。

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 07年に完成したマニュアルの初版は200ページ超。これまで5回改版を重ね、今では70ページ強に落ち着いた。「初めて仕事をする高齢者や女性のパート社員が読んでも内容が分かるよう、平易な表現でまとめた」(浅野社長)。

 マニュアルが完成すると、部門や個人の間にあったスキルの差が埋まり、飛躍的に業務スピードが改善した。さまざまな部署の社員が異なる仕事に携わることで新しい「視点」が加わったことも、効率化をより進めた。

 今では設計の担当者が来客に応じたり、営業の担当がレジ入力をしたりと、多能職が同社の職務の標準型になっている。浅野社長が「人が減っても困らない」と、胸を張って語れる理由はここにある。

多能職化により、店舗スタッフ以外の社員も、店内の商品配置を把握している(上)。静岡市にある本社(右)。2020年には県内に2店舗増える計画だ(写真:村田わかな)
多能職化により、店舗スタッフ以外の社員も、店内の商品配置を把握している(上)。静岡市にある本社(右)。2020年には県内に2店舗増える計画だ(写真:村田わかな)

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