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やっとの思いで人を採用したのに、すぐ退職してしまう。こんな悩みを持つ経営者が増えているに違いない。そんな中で、たとえ人が辞めたとしても、現場がすぐにパンクしない組織を持つ企業がある。その鍵は、人を「使う」ことではなく「生かす」ことにあった。

(写真:Getty Images)

キーワード ▶▶▶多能職化

マルチプレーヤーを育成 設計社員も接客する会社

業種業態にかかわらず、組織で起こる問題が「属人化」だろう。ある仕事を特定の社員に任せていると、退職した途端に会社が回らなくなる。複数のスキルを習得する「多能職化」は、高離職率時代には必須だ。

 「人のやり繰りに困った経験はこれまでない。今後もし、従業員が次々に退職したとしても、組織が回らなくなることはない」

 このように語るのは、仏壇や仏具を製造販売する、お佛壇のやまき(静岡市)の浅野秀浩社長だ。静岡県内に6店舗を展開するほか、仏壇の製造では現在、業界トップクラスの座にある。

 正社員はわずか37人にもかかわらず、県内でも有数の優良企業として認められる理由は、社員1人当たりの生産性の高さにある。同社では、特定の人に仕事が集まることで起こる「属人化」を改め、業務の無駄と無理を見直してきた。

 浅野社長は1988年の入社以来、生産畑でキャリアを積んできた。「トヨタかんばん方式」に大きな影響を受け、静岡県内にある自社工場のほか、インドネシアと中国の生産工場にも同じ仕組みを導入し、効率化を進めてきた。

 仏壇の製造は複数の工程に分かれていたため、そもそも属人化しやすかった。その上、担当社員によって作業時間も異なるため、製造途中の仕掛かり品が工場内の至る所に置かれていた。

 こうした状況を改善するために、浅野社長は製造工程の統廃合を繰り返しながら、担当社員が複数の工程を兼任できる「多能工化」を進めた。その結果、「仏壇を1台製造するために60日かかっていたリードタイムを、最短7日に短縮した」(浅野社長)という。

自社ブランドの仏壇製造のほか、OEMも手がける。無駄の削減を徹底したことで製造にかかるリードタイムを6分の1に縮めたほか、小売り部門では残業ゼロを実現した。右は浅野社長(写真:村田わかな)