2019年12月号で最終回を迎えた「佐々木常夫と読む城山三郎」の連載では、新しいリーダー論を提示した。2020年代をスタートするに当たり、改めて経営者へのメッセージを聞いた。人を生かすために具体的な行動を起こす「意識改革元年」になるという。
(聞き手は本誌編集長・北方雅人)

1969年東京大学経済学部卒業後、東レ入社。自閉症の長男、肝臓病とうつ病を患う妻を抱えつつ、仕事では破綻会社の再建やさまざまな事業改革などを実現。繊維管理部長、経営企画室長、取締役などを経て、2003年に東レ経営研究所社長に就任。10年に佐々木常夫マネージメント・リサーチを設立。家庭と仕事の両立、独自のリーダー論など、その考えに賛同する経営者、ビジネスパーソンは多い(写真:菊池一郎、以下同)
城山三郎さんの連載を執筆いただき、ありがとうございました。そもそも城山さんの書物にはまったきっかけは何だったのですか。
佐々木:最初に読んだのは元首相広田弘毅のことを書いた『落日燃ゆ』でしたか。日本はあんなバカな戦争をどうして始めたのかが知りたかったので、この本を手に取ったのです。
すると「あとがき」か何かで、城山さんが17歳のときに志願兵として海軍に入隊したことを知り、城山三郎という作家に興味を持って、少しずつ読み始めたんです。
学生時代は手当たり次第にいろいろな本を乱読していましたが、会社に入ってからは忙しいので、城山さんのような面白い本しか読まなくなりましたね。
リーダーの定義はない
私も最近は多忙を理由に仕事関連の本以外はあまり読んでいないのですが、いろいろなジャンルを読んだほうがいいですよね。
佐々木:大丈夫ですよ(笑)。生きていく上で、知識はたくさんいりませんからね。
リーダーについても同じで、こうあるべきという定義はありません。経営者の要諦は、決断力とか先見性とか言われますが、そんなの関係ない。経営者の個性に合わせたやり方でいいと思います。
長い時間を共に生きるには、全人格をさらけ出すのですから、演技をしても仕方ない。
個性は変えられません。怒りっぽい人に優しくしなさいと言っても、それは無理ですよ。(プロ野球の)野村克也監督に明るくなれって言っても、無理(笑)。でも、野村さんは一流のリーダーで、それが持ち味ですから。
私は「べき論」が嫌いでね。みんな自然体でいいんです。
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