(写真=鈴木愛子)
(写真=鈴木愛子)

Q. 新型コロナウイルスの感染拡大でコンサートが中止になり喪失感に襲われる中、新たに何に挑んだか。

A.独自の接触通知アプリを開発し、普及に努めた

 2020年はデビュー50周年記念の全国ツアーを控えていました。「I can sing here~今ここで歌える奇跡~」というタイトルは僕自身が決めたのですが、何とも皮肉なタイトルです。なぜなら、新型コロナウイルスの感染拡大で、2月22日のツアー初日以降、すべての公演が中止もしくは延期になったからです。

 本来、歌手は歌うことでお客様に安らぎなどを与えなければいけないのに、「それどころではなくなってしまったのだ」という寂しさと無力感にさいなまれました。

 次第にスケジュール表が白くなっていく中、それでも未来に目を向けなければいけないと考えました。僕に何かできることはないか。そのときひらめいたのが、コロナ対策の接触通知アプリ「テイクアウトライフ」でした。

ライブ配信アプリを開発

 少々名前がややこしいのですが、遡ること10年前、僕は「テイクアウトライブ」というアプリを開発しています。これは、QRコードを利用し、音楽や映像などのデジタルコンテンツをスマートフォンなどに配信するサービスです。

 具体的には、コンサート会場などでQRコードが印字されたカードを販売。専用アプリで読み取ると、アーティストからのメッセージや当日のライブ映像などが送られてくるという仕組みです。

 このシステムは、ガラケー全盛時代に私自身が考案しました。レコードからCD、配信へとデジタル化が進む中、アーティストが適切な利益を得た上で、ファンとのつながりも強められるマネタイズの方法はないかと考えたのです。

 11年に特許登録、僕が代表を務めるティーオーエアで、13年からテイクアウトライブ事業を手がけています。テイクアウトライブは、個人情報の入力も登録手続きも不要。QRコードを読むだけで、直接端末にコンテンツが届くのが特徴です。QRコードを読み込んだ端末に、いつでも追加のデータを配信できるため、次回のライブ告知なども可能です。

<span class="fontBold">カードに印字されたQRコードをテイクアウトライブのアプリで読み取ると、ライブの映像などが配信される。情報はQRコードを読み込んだ端末でしか見られず、無制限にダウンロードされない</span>
カードに印字されたQRコードをテイクアウトライブのアプリで読み取ると、ライブの映像などが配信される。情報はQRコードを読み込んだ端末でしか見られず、無制限にダウンロードされない

 このテイクアウトライブの仕組みを活用して開発したのが、接触通知アプリのテイクアウトライフです。イベント会場や飲食店などに掲示されたQRコードを読み取ると、感染者が発生した際に通知が届きます。

 日本医師会の先生方に「スマートで合理的なアイデア」と評価いただきました。実際、21年5月の日本相撲協会主催「大相撲五月場所」などで採用されています。

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