海外事業成功のカギと教訓
これまでコンサル業務を含め数多くの企業と関わり、業種も規模も異なる組織を内外から見てきました。そこで得た結論として、日本企業の海外事業成功のカギは以下の3つにあると考えます。
・こだわりを持った「企業理念」
⇒組織と人心を束ねるのは企業理念
・プロによる経営執行
⇒経営執行者も専門の職人
・実践と実体験を通じた人材育成
⇒世界市場で戦う戦略立案能力を付けさせる
1つ目は「企業理念」です。何のために集まったのか? 何でこの国や社会に貢献するのか? やって良いことといけないこと、やらなければならないことなど全ての判断基準は企業理念にあります。国や人種、宗教を問わず全従業員が共有し、実践すべき会社の姿を常に掲げて経営を遂行する。その結果、本社と同じ文化、雰囲気が育まれるのです。
2つ目はプロによる経営実行です。経営は専門職であり、営業、財務、生産のようにプロフェッショナルな技能です。この発想は日本企業に不足しているものではないでしょうか。
例えば「経営はプロに任せる」というトップがいます。これは経営者ではなくてオーナーであり、投資家というべきでしょう。
また、優秀な中間管理職から社内競争に勝ち抜いて昇進した社長もいます。日本企業に多いパターンですが、ここにも本当の経営者といえない人が多いのが現実です。優秀な中間管理職は、優秀な部下に支えられて業務が回るのですが、いざ自分が経営者になった時、自らビジョンを描き決断する力が不足しているように感じます。経営者とは部門のプロを束ねて使いこなしながら、会社の伸ばすべきところを優先して全体のバランスを取りながら組織を改革・変革できる人物です。
3つ目は、部門のプロを育成するように、経営者として早くから実践で育成し経験を積ませることです。海外現法は一企業です。海外現法のトップに経営者候補を配置し、経営の本質を学ぶ場と位置づけて育成することが重要です。

カンパニーの語源と企業理念
いかにパラダイムシフトを起こして変わっていこうとも、やっぱり中心に置かなければならないのが企業理念です。
会社や企業を意味する「カンパニー」の語源は「共にパンを食べる仲間」にあります。危険を共にしながら漁をする船員のことを「カンパニー(仲間たち)」と呼んでいました。嵐に遭って死ぬかもしれないけれども、仲間を信じ、志を同じくして同じ船に乗り込み漁をする。そして漁で得た利益の中から船主に船賃を払い、残りをキャプテン(船長)が、仕事に応じた分け前を与える。それがサラリーであり配当の原点です。
株主が得る配当も、経営者の報酬も、従業員の給与も、リスクを負い、進路を決め、共に働き、その時間と苦労を共有した結果と言うわけです。だから「仲間たち=カンパニー」は共有する思いと志(=理念)という強い絆で結ばれている。共有する場が「カンパニー(=会社)」なのです。
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