印僑パートナーが重要な理由

 世界三大商人といえば、ユダヤ、華僑、印僑ですが、ドバイのビジネスは印僑の領域です。インドから西にまっすぐ進むとドバイの港に突き当たります。華僑は東南アジアを、ユダヤはアメリカとヨーロッパを主に占めているのに対し、印僑の領域はドバイを拠点にインド以西の中近東とアフリカ地域が中心です。さらに中央アジアのウズベキスタン、カザフスタンなどイスラム圏の国や、ウクライナあたりの東欧諸国の一部までが印僑の勢力範囲に入ります。

印僑の影響力はインド以西の中近東やアフリカ、中央アジアのイスラム圏諸国や、東欧の一部まで及ぶ(写真:123)
印僑の影響力はインド以西の中近東やアフリカ、中央アジアのイスラム圏諸国や、東欧の一部まで及ぶ(写真:123)

 ドバイは古くから貿易の中継地点でしたが、近代になって、ドバイの国王シャリフが運河での停泊や港を使用する権利などを最初に与えたのがインド人だったこと、そしてイギリス統治下時代に、同じくイギリス領であったアフリカ諸国にインドから移住した(させられた)人が今も多く暮らしていていることが印僑ネットワークの源流です。ですから、東南アジア諸国では華僑とパートナーと組むことで事業がうまくいくように、ドバイでは印僑と組むことが世界中に販売することができる鍵なのです。そのためドバイでは信頼できる印僑パートナーと巡り合うことが鍵でした。

 流通網づくりの第一は総代理店の設定です。代理店を見つけるまでの過程は完全なる手探り状態です。商品をどこでどのような顧客に売りたいという明確な基準があるので、そのターゲット顧客はどこで買い物をするのか、その店に商品を卸している問屋はどこなのか、商流の下流から上流に向かってたどっていくという方法で調査をします。

 現地に赴き、競合になりそうな商品を置いている店頭をいろいろ回り、裏面ラベルを見て、どの卸が扱っているかを調べると、いくつかの現地有力卸売企業が分かります。そうやって卸売企業をいくつか調べ、アポを取って訪問し交渉します。その際には、次世代の後継者がいるか、現地での商売の長短、過去に扱ったブランド、ドバイ以外で販売力が強い国や地域、ワンオーナーか否か、など独自の選定や評価基準を持っていました。また人間対人間ですので相性もあります。そうやってこの会社、この人なら、と思うとその企業に一度任せてみて、結果うまくいかなかったらまた別の企業を探すというのを繰り返して、トライ&エラーの結果ベストパートナーに巡り合うのです。

 これまで華僑や華人との関係を築くのにも数年かかりましたが、今度は印僑。華僑よりもさらに手ごわいということは元商社マンだった父から、他国ではあり得ない提案をされたことがあると聞いていました。例えば、値段交渉が最終段階に入りこれ以上はこちらも譲歩不可となったときに、「オレの顔を引っぱたいてくれ、それであと少し、10セント下げてくれ!」と言われあぜんとしたそうです。ロジカルにビジネスを進めにくい。正直に言って日本人には疲れる相手です。

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