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 そこで市場開拓する際、総代理店の人と相談しながら、来期は支店を出して一から流通網をつくり、有力な問屋が扱う競合他社の商品を潰しに行くのがよいのか、その地域に根を張る有力問屋に「地域総代理店(アゲン)」として契約し、その地域を任せていった方がよいか決めるわけです。

 総代理店からすれば、数十%の利益を失いますが、新規市場で増大する売上げと支店開設費用や人件費、それに開拓の時間をてんびんにかけると、成長が未知数な地域や有力なアゲンがいる地域ではその方が効率的です。

 さらに流通網を広げていく際、地元に有力なアゲン候補の問屋がいない、かつ総代理店が出店を躊躇(ちゅうちょ)する地域でもこれから伸びそうな地域には、総代理店の了承の下、マンダム資本100%の販社から支店を開設し、その会社の営業部隊が市場を開拓していきます。

 これはメーカーとしての将来への先行投資。目的がはっきりしているので、収支プラスマイナスゼロが続いたとしても、宣伝費などで補填して、しばらくやっておくのです。うまく回り出したらその地域をアゲンか総代理店かのどちらかに渡して、支店を閉じるという方法を取りました。総代理店方式を採用している時点で、販社を設けることは本来契約違反とも言えるのですが、当社で開拓し最終的に採算が取れるようになった時点で総代理店に返すので、彼らからしても大変ありがたいわけです。

 こうして全国を埋めていき、港、駅、空港、大手企業の工場があるような町にはほとんど拠点を設けました。私がインドネシアにいた9年間で拠点を約90まで増やすことができました。もともと前任の本社副社長が立てた構想であり、展開していた思想を、私の時代にさらに拡充させ伸ばしていきました。

 この「二総代理店+現地有力問屋(アゲン)活用方式」は、インドネシアにおける流通戦略の非常に大きな成功例となりました。総代理店とアゲンの割合は7対3ぐらい。アゲンをつくらなければ隅々に拠点をつくることは不可能ですし、メーカー直の販社による早期進出を果たさなければ市場が取れない地域もたくさんありました。大都市や主要都市は総代理店、地方の小さな地域はアゲン、発展初期の町はメーカー直の代理店から、と棲み分けができていたので三者間で問題は起こりませんでした。

インドネシア全土を見ることができるようになり、地域の特徴やニーズに合った商品を投入することが可能になった(写真:123RF)

 もちろん、私も総代理店と各地を回り、常に地域の支店長やアゲンの社長さんに会いに行き、今後の戦略について話をしたり、相談したりしながら常に意見交換をするという重要な仕事をしていくのですが、同時に地域の生の情報も全部入ってくるので様々な面で有利に働くようになります。全土の実態を握れるようになると、ある町の人口が増減している理由、地域ごとの経済状況なども見えて、ニーズに合うサイズの商品に入れ替えたり、どこよりも早く進出できたりといろいろなことがさらにうまく回り出していくようになるのです。

 また毎年、アゲンの社長や各地の支店長など100人近くを集めて世界各国で政策会議も実施しました。こうすることで、三者間のコミュニケーションも良くなり、アゲンや総代理店には他のブランドよりロイヤルティーが上がり、確実にマインドシェアが上がっていきました。