また工場には立派なモスクを作り、礼拝をゆっくりできるように配慮したり、ラマダン時には昼食時間が不要なため昼休みを30分にして帰宅時間を早めたりするといったという対応もします。ただしジルバップ(イスラム女性がかぶる頭巾)の使用については、労働組合と話し合い、機械に巻き込まれるなど事故防止のため着用を禁じていました。このようにいろいろな配慮と区別、対策が必要な国です。

 もう今はそのような時代じゃないのでは?と思うかもしれませんが、良かれと思ってそれらを廃止し、すべてフラットにした日系企業で逆に統制を失ってしまったり、現地企業と見分けがつかなくなったりして、その結果、幹部などステータスの高い人材が辞めるなど問題が発生した例を見聞きします。

 言葉に出さないけれども、やはり彼らからすると「一緒にはやっていられない」という意識があるのではないでしょうか。民主化したとはいえ、まだまだ私たち外国人が思っている以上に微妙な意識や感覚が根強く残っているものです。これからインドネシアに進出しようとしている企業は、階級社会を意識し社内に何かしらのポジション区別を設けるなど配慮が必要です。

 またもう一つの注意点は、国力がついたことで生じているナショナリズムの高まりです。若者を中心に「インドネシアの独自色を」という意識が高まり、国家・国民・文化に対して敏感になっています。外国人である私たちは、特にこのことを意識すべきです。軒先を借りて商売をしている認可事業の日系外資企業である我々は「インドネシアの独自文化や国民を尊重しています!」という姿勢を積極的に示す意識を持つことが大切です。

著者/山下充洋(やました・みつひろ)
1964年生まれ。87年にマンダム入社。2001年マンダムインドネシア社長就任。08年マンダム執行役員、国際事業部担当兼国際事業部長就任。12年にマンダム退社後、同年森永製菓入社。森永製菓執行役員海外事業部担当。15年6月、森永製菓取締役上席執行役員 海外事業本部担当兼海外事業本部長。18年3月末森永製菓を退社し、同年6月から日経BP総研 中堅・中小企業経営センター 客員研究員。
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