そこで私が考える国際情勢、インドネシアの政治・経済の変遷、今後の動向予測、そして我々の責任、これからのビジョンとミッション、あるべき姿、目指すべき目標、などなどこん身の思いを込めて数時間にわたって話をし、幹部・役員全員に私の思いと方針を説明し、意識改革を求めました。
今、世の中の流れは民主化で、インドネシアはもう古き良き時代には戻らない、これまでやってきたことは否定しないし、評価しているし、感謝もする。けれど国際化の窓が開いてしまった今、これまでのやり方は通用しない。組織化、近代化の概念、そして経営とは何かを話しました。
では次に我々がやるべきことは何か? コストと利益をどう考えるか? 人的生産性を上げるために工場にすることは? 国際的大手メーカーにも負けない流通戦略、マーケ戦略に基づいた宣伝計画、などなど部門別に具体的に課題と方針を話し、それぞれの部門の幹部・役員が実行して解決しなければならないことを話し、幹部・役員に意識の変革を促し、改革ムードを醸成しました。
さらに今後の評価制度も実績と具体的な行動をベースに評価する。実績・結果を出した者には年齢や役職にかかわらず高く評価する。これまでと同様に仕事をしている者や変革に挑戦しない者は不要になっていく。これらを踏まえた上で私の経営方針に賛同してくれる人、ついてきてくれる人だけ残ってほしいと話をしました。
思いが伝わったのか、この合宿以降、特に現地人幹部・役員の意識と私に対する態度、そして仕事に対する目の色が変わり、変革の意識が醸成されていくのが目に見えて分かりました。「インドネシアナンバーワンローカル企業から世界で戦える国際企業へ」を目標に新しいビジネスモデルの構築と実践が始まりました
インドネシアに残る階級社会と注意点
インドネシアは複雑な社会です。300を超える多様な民族が暮らし宗教も多様な国。同時に、貧富の差など経済的階層と、職種やステータスによる社会的階層も存在します。会社の中も他国ほど風通しが良くないところもあります。私たち日本人が思っている以上にこの意識は根強く残っているため、逆に会社内に階層社会を意識した制度やルールを残しつつ、うまく利用して企業運営をしなければなりません。
例えば食堂。一般用、管理職用、それと役員・日本人出向者&来客用です。そこで提供されるメニューも階級や嗜好に合わせて変えてあり、また予算のレベルも全然違います。
また、インドネシア人は社内ステータスの区別を明確に求めるため、役職ごとに制服も分けていました。一般従業員は所属部門ごとのユニホーム、管理職になると制服が変わりますし、マネジャーになるとスラックスにワイシャツ、役員にはネクタイ着用を義務づけていました。
彼らにとっては「半袖のワイシャツに黒のズボンになった」「俺はユニホームを着なくていい」「今日からここの食堂に行ける」ということが誇りであり、部下からの憧れなのです。
会社でステータスが上がる機会は積年評価による昇格ですので昇格時期は一律で、機会や基準は完全に平等ですが、教育水準や歴史的な背景などから、結果的に民族と職種によってある種の傾向が出てきます。これはどの企業も同じだと思いますが、例えば工場はイスラム系インドネシア人が多く。営業系や管理職は中国系、財務や法務は専門的な職業にはバタック族といった具合です。

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