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「ジョバー制度」の導入、そして社員を独立させ地域総代理店に

 マレーシアでも自前の流通網を作り、順調に事業が拡大し始めた頃、「ギャツビー」とは別に、もっと足の速い、回転の良い商品を作らなければ問屋のインストアーシェアやマインドシェアが上がらない、また営業効率や経営効率を上げるために次に何が必要か、さらには従業員のモチベーションを上げるにはどうしたらいいのか、という新たな悩みが生まれ、日々思案していました。

 各州にある営業所の営業マンも毎月売上目標を達成し、その分コミッションなど手取り給料も上がっていったのですが、私は彼らにその先のモチベーションを上げる方法を探していました。

 営業マンたちは、現地で雇用したマレーシア現地法人の社員です。その土地で暮らしている彼らにとって、クアラルンプールで勤務することや、日本のサラリーマンのように組織の中で昇進することが必ずしも人生の目的ではないわけです。そんな彼らの将来のため、解決策の一つとして導入したのが、「ジョバー(JOBBER)制度でした。

 彼らのほとんどは中国系のいわゆる華人です。中国系の人たちというのは、独立して一国一城の主になりたいという思いが心底にあります。私は彼らに「一定以上の売り上げを安定的に確保できるようになったら、現在担当している地域の代理権を与える」ことを約束し、各州に1人ずついる営業マンを、マンダムの地域総代理店の経営者として独立させることにしました。「自前の流通網を持つことがいかに重要であり、大切であるか」ということは分かっていましたし、独立させても絶対に政策を徹底できると判断した上での決断でした。

 独立すれば、今後は売れば売るほどもうけは青天井になるわけですから、彼らのモチベーションは上がるし、売上高は下がりますが、現在使用している営業拠点は彼らに簿価で払い下げれば、固定費や人件費がゼロになる。強い財務体質で経営が続けられ、お互いWin-Winになります。しかも独立した時点で、本来ならマンダム・マレーシアの「問屋さん=お客様」に変わるのですが、もともと私が雇って育てた社員ですから、彼らからすると一国一城の主になれた恩義を感じてくれていることもあり、絶対私には頭が上がりません(笑)。仕事上の関係性を見ても、どう考えても私の方が立場も強く、この先もずっと取り引きのルールを守ってくれる自信がありました。

 ジョバー制度の導入後、売り上げを順調に伸ばして、登記方法や在庫管理、財務などの指導をしながら2年ほどで全営業マンが独立を果たしました。結果として各州の営業所は地域代理店になり、固定費が削減され、経営はより一層強固になりました。中にはその後、売り上げ不振で代理店を外された者や担当地域を新設の代理店と分割された者など明暗はありましたが、マレーシアは完全な「勝ちパターン」が定着しました。

意図的に「禁じ手」を使って商品開発

 経営や営業効率を上げるために行ったさまざまな解決策のうち、「ジョバー制度」については、本社を説得し了解を得て実行したものでしたが、許可を得ず強引に実行したものもありました。ボディーソープの商品開発がその一つです。

 マレーシアでは、まだシンガポールほど生活レベルが上がっていないため、シンガポールのように高額な商品や奇抜な商品を売る段階ではなく、手離れの良い足の速い商品を増やしていく必要がありました。

 「ギャツビー」はマレーシアの購買力に合わせてシンガポールより低い価格で販売していましたが、原価は同じなので粗利が下がります。しかも化粧品というのは毎月一個ずつ購入する消費財ですので、売り上げが鈍化した時などに、特売が打ちやすい石けんやシャンプーといった消費ペースが早く、雑貨品に近いベーシックな商品が必要でした。

 そこで本社に「特売用に手離れの良い商品を作りたい」と何度も依頼したのですが、日本では価格戦略に巻き込まれるカテゴリーへの進出は既に考えておらず、一向に商品が開発されませんでした。