毎晩宴席に呼ばれて知らない人と乾杯! 乾杯!

 華僑の方の宴席では不思議なことに、なぜか毎回半分ほど知らない人が同席する大所帯のものが多いです。パートナーの家族や友人、パートナーがやっている別の会社の幹部社員や取引先やら、とにかくいっぱい。彼らの宴席は、会社の人間だけ、決めた人だけというのではなく、会食をする必要がある人たちを1回にまとめて声をかけて、お酒を飲んで食事をして、「あの件よろしくね!」「この前はありがとうね!」「でっ、どうする?」。一度に済ませてしまうのが華僑のスタイルです。

 私は最初、自分から現地社員や代理店の人と飲みに行っていたのですが、次第にパートナーから誘われ、その宴席で出会った人たちから呼ばれることの方が多くなり、夜な夜な宴会に出て乾杯する日々が続くようになりました。次々と知らない人を紹介されて乾杯していると、ある時には有名企業の社長や著名人、パイロットや軍人、政府関係者までが来ることもあり、ワケの分からないくらい交友関係が広がっていったのです。「さまざまな人と交わっていく中でどこかに接点を見つけ、お互い商売につなげていこうとする」のが華僑式ビジネス人脈のつくり方なのです。

 ただ、酒席ではいろいろなサインが出ていることと、思っている以上に「見られている」ので注意したいです。まずは家族とご飯を食べられる人かどうか。次に、他の人に紹介できる人かどうか。それをクリアして、次の重要な商談相手との宴席に呼ばれるようになるまで観察されます。お酒は強いか弱いか? どこまで飲むと酔うのか? 酔うとどのように豹変(ひょうへん)するのか? といったことです。

 華僑の宴会スタイルは乾杯の回数が非常に多く、つがれれば飲み、ついだ方も飲まなくてはいけません。結果的にみんなが深酒することになるのですが、そんな中でもお互いに立ち振る舞いを見ているのです。

いろいろな人たちを誘い、フランクに酒を酌み交わすのが華僑のスタイル。しかし、酒席での振る舞いはじっくり観察されている(写真:123RF)※写真はイメージです
いろいろな人たちを誘い、フランクに酒を酌み交わすのが華僑のスタイル。しかし、酒席での振る舞いはじっくり観察されている(写真:123RF)※写真はイメージです

 そして宴会の終了後、内輪だけになったときに「アイツどう思う?」「ああいうタイプはこうなるから気をつけろ」などと本音を話すのです。後になって、自分もこうやって観察されていたことを知り、ハッとしました。出された物を全部しっかり食べて、潰れるほど飲んでも、無礼な言動がなければ、頑張ったのでOKですが、宴席を乱すような無礼な言動はNG。これがチャイニーズ社会での飲み方、付き合い方なのだと実感しました。

 当時の私はまだ若く、学生時代からバリバリの体育会系育ち。浴びるほどのお酒を飲んできたことや、お酌を受ける際には素早くグラスを差し出していただくといったことが身についていました。それがシンガポール時代から役立っていました。

 中国人はメンツを大事にしますし、特に日本人の私は、どこに連れて行っても大丈夫な人間かどうかを常に試されていたようです。一方で「今度会ったらヤマシタをよろしくね」と私をいろいろな人に紹介してくれたのはうれしいことでした。私もそれに応えるべく、体調が悪く飲みたくない日も、誘われた会食には絶対に参加して、毎晩「笑顔と鉄の胃袋」で乗り切っていました。

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