起業前は楽天勤務ですね。

倉橋:楽天入社前から起業は決めていました。いつどのようにスタートするかは分かっていませんでしたが、5年目ごろに刺激がないというか、自分自身が緩んできている感じがありました。

 このまま頑張っていたら、それなりの立場になって経験も積めるだろうということを考えていたのですが、予測のできない成長をしたいとの思いから、入社前のことを思い出したのです。起業しようと思って楽天に入ってがむしゃらに頑張ったのだから、チャレンジをしなくてはと考え直し、その1年後に辞めました。

 楽天在籍中に成長を体験できたことは大きな学びです。ダイレクトに事業の成長を感じましたし、強烈な成長を体験してきた周囲の人から得るもの、感じるものもたくさんありました。今思えば、社員一人ひとりに任せておけば伸びる会社です。現場のコミットメントが異常なくらい高かったからです。

 もともと楽天は数字に圧倒的に強い会社だと思いますが、細かいところまで最後までやりきる文化がある。例えば、数字を分解して細かいパラメーターを0.1%でも上げる。その積み重ねが、大きな成長につながっています。楽天ではその0.1%への徹底的なこだわりも学びました。

今は細かい数字の向上にこだわらない

そうした学びを経営に生かせていますか。

倉橋:当社の今のフェーズでは、定量側面ではそこまで細かくやっていません。私たちは、何が価値で、それをどう磨くのか、できる限りそれを大きく捉え実行する、それを繰り返している段階です。

 ここでは事業を因数分解した数字の0.1%を上げようとする努力は、取り組むべき課題の選択、優先順位を間違える可能性がある。なので、あえてやっていないのです。ただし、考え抜く、考え続ける、そういった側面では確実に生きています。

経営で心掛けていることを教えてください。

倉橋:遠いところまで行きたい会社である、という自己認識を社員一人ひとりが持つことが重要です。

 方角は私が示しますが、その途中に何があってどうやって進んでいくか、何度もイノベーションを起こし、どう壁を突破していくかは、皆が個々に考えられないと難しいと思っています。

 ですから、まずは考えることも実行も任せる。それから、私はどのようなことを考えていて、どのような学びを得たかを正直に明らかにする。これらを重視しています。私たちはトップダウンだけでは目標地点まで到達できないのです。

 また、方角を示すことについては、1つの事象だけを理由にしないようにしています。私たちはデータとインターネットを活用した事業を展開していますが、世の中の大局がそれだけで決まるわけではありません。

 消費者の動向、企業間の競争、データに対する国の考え方、働き方に対する皆の考え方など、不可逆な多様な要素がつながっていますので、よく全体を見回して方角をつかむようにしています。

 方角を定めて、そこがぶれなければ、意思決定は間違えないし、急にスピードを変えても問題にならない、と考えています。

長引く新型コロナウイルスの影響を機に「人とのタッチポイントを築き続けられるデジタルチャネルを、単なる販路などではなくて企業活動の前提となる体制として確立してほしい」というプレイド倉橋健太代表取締役CEO(写真:清水真帆呂)
長引く新型コロナウイルスの影響を機に「人とのタッチポイントを築き続けられるデジタルチャネルを、単なる販路などではなくて企業活動の前提となる体制として確立してほしい」というプレイド倉橋健太代表取締役CEO(写真:清水真帆呂)
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