例えば著名な神社仏閣を体験プランの舞台にするために、どのような交渉をしたのですか。

丸山:お金儲けというより、国内外に日本文化のファンをつくりましょうという話をしました。

 高付加価値な体験プランを持続的につくっていくためにはお金を稼ぐ必要があります。ですが、それ以上に文化のファンをつくり、価値をいろいろな方に知っていただくためのプロジェクトなんです、というお話をして2018年に始めました。

 ところで、お寺には茶室があることが多いのをご存じですか。

 お寺は、仏教の教えを説く場であるのはもちろんですが、茶道はじめ、華道や書道、香道など、さまざまな伝統文化の発信場所でもあるんですよ。ですから、伝統的な文化体験を提供することも、お寺の活動の本流なのです。

 100年後には日本の人口が現在より5000万~6000万人も減少するといわれていますが、これは、日本の伝統文化を支える人の数が減っていくということでもあります。

 長期的に見れば、インバウンドは再び増えていくでしょう。外国の方々が日本の文化に価値を感じ、リスペクトしてくれれば、伝統文化も続くはずです。

 お寺の方々は視野が長期的なので、このような新しい流れをつくりたいと根気よく話し続けることで、徐々に賛同していただけるようになりました。

富裕層が日本文化を支える

私が檀家になっている寺にも、使われていないと思われる茶室があります。

丸山:そうですか。古くからあるお寺にはあると思います。それが使われていないのは、私たち側の問題です。

 昔は、月例会などでその茶室を使っていたはずです。お寺が茶器を預かる仕組みもありました。しかし、今はそうしたことが知られていませんし、娯楽や文化を楽しむ手段は多様であり、自宅で無料のネット動画を見て楽しめたりしますので、わざわざお寺に出掛けなくなってしまいました。

 場合によっては文化を「再興」する。これも、私たちが富裕層を対象にしている理由です。

 かつて文化を守ってきた方は、地位やお金のある人でした。現代でも、そういった方々のほうが、私たちの提案に非常に高い関心を示してくれます。高付加価値な体験をつくろうとすると、相応の謝金など原価がかさみますが、富裕層の方々はこれを負担してくれるわけです。

 私たちの事業は、これまで日本の文化を守ってきたお寺や神社、美術館、博物館に対して、内外の「新しい担い手」をつくっていくことでもあるのです。

具体的にはどのような体験を提供しているのですか。

丸山:公にしてはいけないことになっていますので詳しくお話しできず申し訳ないのですが、誰もが知っているお寺で、「ミシュランシェフ」の京料理と、一流の酒蔵とコラボレーションした日本酒を提供し、芸舞妓(げいまいこ)さんに来てもらうという体験プランがあります。

 個人で、この体験をしようとしても、その場を使うことは無理ですし、そのほかの体験をアレンジできたとしても3~4日はかかると思います。私たちはこれを1日、あるいは4時間に凝縮して提供する、といったことをしています。

富裕層向けの体験プランは、著名な仏閣などで「ミシュランシェフ」の日本料理を楽しむといった日本の歴史・文化が感じられるものが人気という(イメージ写真:PIXTA)
富裕層向けの体験プランは、著名な仏閣などで「ミシュランシェフ」の日本料理を楽しむといった日本の歴史・文化が感じられるものが人気という(イメージ写真:PIXTA)

 ほかには、やはりあるお寺を貸し切りにして、その扉を開けた途端に荘厳なコンサートが始まり、使われていなかった賓客だけを通す建物で食事を提供するといった体験プランもあります。お城を借り切ってアートエキシビションを開催するなど多彩です。

 私たちは旅行会社のライセンスも持っていますが、実態は、誰もが驚く高付加価値な体験のみをつくり続ける会社なのです。

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