社長就任後、約6年間の経営を振り返ってどうですか。

田中:先代が53歳で急に亡くなり、社歴が長かったという理由で2014年に社長になりました。私が頼りないので皆頑張ってくれて、この5年間で業績はとても上がりました。売り上げも順調に伸び、利益は約5倍になっています。

 当社のビジネスは1棟100部屋なら100種類あります。

 オフィスビルに1社が入居するなら仕事は1種類ですが、うちは6万6000室分の仕事を毎年繰り返しているイメージです。一つひとつの仕事は本当にこまごまとしていて「これが大変だった」とは記憶に残らないほどなのです。ですがそれだけに、やるべきことをやらなければ失敗します。

 仕事でやるべきこともほぼ時期によって決まっています。

 募集であれば、7月ぐらいから始まる大学のオープンキャンパスを皮切りに、来年の賃料の査定をして、広告宣伝物を作ってというルーティンをきっちりやっていきます。そうやって年内に半分以上の予約を取っておかないと不安になります。

100で売れるものを95で売らない

 予約が思うように入らず不安だと賃料を下げに掛かるので、早め早めに強気で進められるようコントロールしています。

 100で売れるものを95で売らない。そのために細かい仕事を不備なくこなしていきます。そして、それができれば理想的な不動産ビジネスになるのです。

 今、きっちり部屋は埋まっていて業績はいい。17年に東証2部に上場し、18年には東証1部に移ったことで、大手企業が当社の存在を知ってくれ、いろいろな商談を持ってきてくれるようにもなりました。

 経営面でのこだわりとしては、私が若かった頃は営業職の固定給は低く、インセンティブが大きいという給与体系だったのですが、今はそれを一切やめていることがあります。管理系の社員は固定給ですし、インセンティブを強めると仕事の質も基本的には落ちるのです。今では、業界でもこの給与体系が普通になってきました。

今後について教えてください。

田中:先日、採用のための学生の面接をしていて「新たに考えている事業はありますか」と聞かれましたので、「当社が急に野菜を作って売るようなことはないよ」と答えました。私は割と保守的なんです。

 私が社長でいる限りは、既存事業の範囲の中で“不動産テック”を導入してもっと仕事の効率を上げるとか、幾つかの選択をしていくのだろうと考えています。

 大きな思いとしては、学生マンションではトップブランドであり続けたいと思っています。会社を潰してはいけない、100年、1000年続く会社にしたいと思っています。

6万6000室の学生マンションを管理し、直営の学生向け賃貸仲介店舗「UniLife」で学生から入居の予約を取る。写真は新宿店のエントランスに立つ田中剛社長(写真:山本祐之)
6万6000室の学生マンションを管理し、直営の学生向け賃貸仲介店舗「UniLife」で学生から入居の予約を取る。写真は新宿店のエントランスに立つ田中剛社長(写真:山本祐之)
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