ところで、自社所有物件もあるのですか。
田中:自社保有物件はこの春、41棟2799室になる見込みです。本来なら全て自社所有し運営したいところですが、土地の仕入れに大きなコストをかけるのは効率的ではありません。
土地のオーナーには、これまで個人の地主さんや資産家の方が多かったのですが、最近は企業も多くなっています。
企業のオーナーが増えてきたのには、企業が社員寮を持たなくなってきたとか、バブルの頃に建てた建物が不要になったといった要因があります。それをリニューアルやリノベーションした物件もあります。
企業オーナーの中には、当社では買えないような物件を保有していたり、購入できたりする大手のデベロッパーもおられ、お話を頂くこともあります。恐らく彼らだけで学生マンションを管理運営するのは簡単ではないのでしょう。
企業がオーナーの場合は、彼らの新しい事業として学生マンションを活用するケースも出てきました。
例えば、もともとJR東日本の寮だった物件を外国人留学生と日本人学生が一緒に暮らすシェアハウスにしました。同社の要望でここを、学生だけでなく地域の方も参加するバーベキューや餅つき大会などコミュニティー事業ができる場にしています。

目標利回り8%
投資額に対して収益の利回りはどの程度なのですか。
田中:目標としている表面利回りは8%で、管理費や光熱費、税金を差し引いて6%ぐらいを確保しています。ただし都心部は話が別です。
都心はオフィスビルや商業施設のほうが利回りがいいのでしょうか。
田中:どうなんでしょうか。当社は不動産会社とは名乗っていますが、ほぼ学生向けの物件しか扱っていないのでほかの不動産事業のことが分かりません。でもかえってそれが良いのだと思います。
学生向けと一般的な商業施設とはだいぶ異なります。当社の場合は、大学や短大、専門学校があればそこが一番良い立地なんです。
今は新潟や山口、徳島などでも展開していますが、そういった地域の地価は首都圏の10分の1以下です。それでも家賃が東京の半分になることはありません。確かにその点では、地方のほうが有利なビジネスです。
景気の影響は受けませんか。
田中:ありますが、子供の教育がその影響を受けるのは最後でしょう。景気が悪くなったので、賃料を5万円でなく4万円に、というお客さんが増えることは考えられますが、大学進学を諦めようとはなかなかなりません。
リーマン・ショック後も、入居率はほとんど落ちませんでした。ただ、当時は賃料が低めの部屋から決まっていました。今は真ん中より上から決まっています。
こうした変化は時代によってありますが、これは入居の決まり方のプロセスの違いにすぎず、不景気になったからといって大きな波を受けることはありません。
学生マンション以外にもビジネスを展開していますね。
田中:2013年に高齢者住宅の第1号をオープンし、現在は13施設、600室弱の部屋を経営しています。売り上げは全体の5%ぐらいです。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)から始めて介護付き有料老人ホームやグループホームも手掛けています。
この業界に参入したのは、一つには高齢者マーケットがこれから拡大するからです。当時から25年がピークという情報があり、国も補助金を出していました。学生マンション事業は土地のオーナーに建物を造ってもらって10年、20年の契約で運営するのですが、高齢者住宅も土地の有効利用という点では同じスタイルです。
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