田中:東京の大学と京都の大学を受験する学生にはどちらも予約しておいてもらって、受験結果が出てからどちらかに振り分けるといったこともできます。これは当社が多くの物件を管理しているからできることです。

 国公立大学の合格発表は3月10日前後にありますので、そこからどっと皆さんが動きます。

 3月25日から同31日の朝までには新しい入居者に鍵をお渡しできるよう、この時期に総動員で清掃やメンテナンスをします。一般的な物件では退去から次の入居まで最低でも1カ月はかかりますが、うちは1カ月も空かず、すぐに稼働するわけです。

 ちなみに当社のマンションを退去され、社会人になる方の次の住まい探しもお手伝いしているんですよ。

 入居募集に関しては、大学の生活協同組合と20年以上のパートナーシップがあり、各大学にもコネクションがあるので、そこから紹介いただけるのも強みですね。募集も自分たちの管理物件でなく流通物件頼みになると、自分たちで決められないことが増えます。家賃を下げる必要が出て利益率が落ちることもあります。

 しかし当社はそれに至らない段階で入居者を確保できることが大きな強みなのです。

食事付きマンションが人気

学生相手のビジネスならではの工夫はありますか。

田中:はい。一つは入居する学生の親御さんへの対応ですね。

 例えば、入居者の親から「子供と3日間、連絡が取れないから見てきてほしい」という要望が寄せられることがありますが、こうした声に24時間態勢で対応しています。防犯カメラの設置や、ボタン一つで緊急通報ができる機器の設置など設備も充実させています。

 建物の見た目の美しさや快適さも大切ですが、安心・安全を売ることが当社のビジネスの基本です。

 学生に向けた工夫の一つとしては、食事付きの学生マンションを供給しています。

 親にとっては、栄養のあるものをしっかり食べてくれる食の安心、学生にとっては、ほかの学生と顔を合わせて食事をすることで交流が進み、助け合う仲間が自然に増えていく安心があります。

 これが今大変な人気ですぐに埋まっていきます。カフェテリア形式の食堂で管理栄養士が監修したメニューを朝晩提供しています。ただし、マンションの規模が50室以上の比較的大規模な物件でないと食堂の利用が少なくなるため、主に地方で展開しています。

 食堂を会場にして、就職活動を始める学生のためのスーツの着方、ネクタイの締め方の講習をアパレルメーカーの協賛を得て実施したりしています。学生に特化したイベントは他にもあるでしょう。今後、ここから新しいビジネスが出てくるかもしれません。

学生に人気の食事付き学生マンション。学生の親からの問い合わせに24時間対応するなど安心してもらえるマンションづくりも好評(写真:ジェイ・エス・ビー)
学生に人気の食事付き学生マンション。学生の親からの問い合わせに24時間対応するなど安心してもらえるマンションづくりも好評(写真:ジェイ・エス・ビー)

食事が付いていることや立地以外ではどのような部屋が人気ですか。

田中:最近は延べ床面積が20平方メートルぐらいで設備が整っている部屋が人気です。

 一時期、30平方メートルぐらいまでの物件の人気が高まったことがあるのですが、現在は、建築原価が一部屋800万円から900万円になっていることもあって、都心の場合、この広さだと学生一人が住む家賃としては高くなりすぎます。

 場所にもよりますが、今は食事付きで10万円を切るような賃料で入居できる設定にしています。

 あと、家具家電付きの部屋も人気があります。

 引っ越しや退室の際の処分の手間、費用、時間を抑えられます。学生は数年という短い期間しか住みませんからね。冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、ベッド、デスクなどに加えて、食器や洗剤など生活を始めるときに必要なおよそ50点の備品まで付いています。最小限の私物を宅配便で送れば引っ越しできるので、最近問題になっている“引っ越し難民”にもならずに済みます。

次ページ 目標利回り8%