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現在約6万6000室の学生マンションを供給し管理する大手、ジェイ・エス・ビー。毎春の入居率は99.9%とほぼ満室。少子化は進むものの、大学への進学率は堅調で、学生数は意外にも安定している。同社は高齢者住宅事業にも進出するが、あくまで学生マンションがメインで管理戸数を着実に増やし空きも出さない経営を続けている。物件の多くは管理委託か一括借り上げで、借り上げ物件のオーナーには実質年5~6%の利益を還元しているという。効率的な不動産事業を整えた経営手法を田中剛社長に聞いた。

(聞き手/日経トップリーダー編集 田中淳一郎 構成/片瀬京子)

会社の成り立ちを教えてください。

田中剛氏(以下、田中):当社はもともと京都のゼネコンに勤めていた先々代が独立して創業しました。

 先々代はそのゼネコンで営業をしていたのですが、京都で建物を造るだけの仕事はあまり広がらなかったようなのです。そこで、京都は学生が多いので、その入居も考えた仕事を展開しようと1976年に創業したのが当社です。

 先々代が起業してしばらくして、1990年前後に第2次ベビーブームで生まれた子供たちが大学に入る時期になりました。

 多くの学生を受け入れるために、同志社大学が京都の南、京田辺市に新しいキャンパスを構えたり、立命館大学も滋賀県草津市に新キャンパスを造ったりしました。何もないところに学生の居住ニーズが生まれたのです。これらを契機に当社も大きくなりました。

田中剛(たなか・つよし)
1953年、福岡県飯塚市生まれ。76年に立命館大学卒業、東洋事務機工業(現東洋)を経て85年に京都学生情報センター(現ジェイ・エス・ビー)入社。90年に取締役、その後関連会社代表、ジェイ・エス・ビー常務、システム開発本部長、営業部門統括などを経て2014年に代表取締役社長(営業部門統括)、15年同(管理部門管掌)、16年同 (現任)。趣味はゴルフ(写真:山本祐之)

 そうした拡大と並行して、東京、札幌、仙台と全国展開を進め、現在は全国におよそ6万6000室の学生マンションを管理運営する会社になっています。

 当社の業務ですが、既存の不動産を学生マンションとして管理運用するのではありません。

 学生マンションを建てる場所としてふさわしい土地を選定し、どのような建物がいいかを企画し、土地のオーナーに提案するところから始めています。建築はゼネコンにお願いして完成したら管理運営します。

 管理運営では、基本的にオーナーから物件をサブリースし、入居者の募集から契約、設備の維持管理、館内食堂の運営など全てを当社グループで担当しています。

 入居者募集については、フランチャイズ展開をする同業者も少なくありませんが当社は直営です。入居案内と募集、契約をする店舗が全国に78店あります。

毎年ほぼ100%の入居を決めきる

強みはどこですか。

田中:入居率の高さです。毎年4月末に算出していますが、ほぼ100%の入居を決めきっています。業界では、年間を通じて95%ほどだといわれています。

 10月半ばくらいから翌春の入居者募集を始めます。高い入居率を維持できるのは、春までにどれぐらいの物件に空きが出るかを早めに把握し、それに対してどれくらいの入居希望を集めれば、ちょうど100%埋まる、といった計算を基に運営しているからです。

 どうしても当社の物件で足りなければ、流通物件と他社物件を紹介しています。

 学生さんは、当社のマンションに平均で2年と少し入居しています。学年でキャンパスが変わる学生もいますし、サークルやアルバイトで生活が変わることもあります。3分の1ぐらいの学生は一度引っ越すイメージです。1年目に学校の近くで住まいを見つけられなかった学生が、1年たつ前に見直すこともあります。

 こうしたデータも把握していますので、空きが出ないように運営できます。