最初に、人がやらなくてもいい仕事を減らすことという話がありましたが、人がやるべき仕事、やらなくてもいい仕事とは、どこで線引きするのでしょうか。


:そこは経年で変わっていくと思いますが、例えば基本的にサービス業は人が携わったほうが温かみがあっていいと思います。さらに言えば、日本人は今、ものより体験を買うようになっていると思います。だとすれば、売る仕事もこれまで以上に人間がやるべきかもしれません。

 僕も今までずっとネットで服を買っていたんですが、久しぶりに店で試着をして買ってみると「この体験はいいな」と思いました。そこでは、服だけでなく、店で服を買うという体験で感じる満足を買ったんだと思いました。

 人がやらなくてもいいことを全部機械がやるようになると、逆に人が携わっていることを消費者が求める可能性があります。手織り生地などはその典型例だと思います。機械織りに比べると値段は高くなりますが、高くても手織りがいいと言ってそれを求める人は今でも結構いますよね。

 全ての産業で機械化は進みますが、人が人にしてほしいと思うことはあるのです。

 医療はますます機械化が進みます。レントゲン撮影した画像から影を見つけるとか、問診時に過去の症例と照らし合わせるとか、そういった作業は機械が得意とするところです。一方で、手術を機械がやるとなったら、患者や家族はどう思うでしょうか。50年後なら機械がやったほうが正確なのかもしれませんが、本当に機械に任せられるでしょうか。

 心のケアのような仕事も人が従事し続けると思います。こうした仕事は、サービスを受ける側がどう感じるかによって変化していきますが、人がやるべき仕事はなくなりません。そうした時代に向けて、人がやるべきことをやりたい人がやれるチャネルのような仕組みもつくっていきたい。そこから新しい産業も出てくるでしょう。

アジアに共通の人材管理システムを普及させたい


海外展開はいかがですか。


:そこは、逆がいいんです。僕は日本がすごく好きだし、日本には発展できる余地が経済的にも地理的にもまだあると思っています。先ほども少し触れましたが、海外の方々が日本に来やすい仕組みにつながるサービスを生み出したいと考えています。

 今はまだ、日本人はほとんど“日本人の身なり”をしていますが、米国人にもアジアンアメリカンやヨーロピアン、メキシカンなどがいるように、将来は日本も変わるはずです。そして、彼らが次の日本をつくっていく。これはすてきなことだと思います。

 当面は、日本で提供しているサービスをアジアで展開していきます。そうすることで、アジアで共通の仕事の評価軸ができれば、アジアの中で人、労働力、お金の流れがスムーズになります。その中心に日本があったらいいと考えています。そうやって日本を維持していくという野望があります。

 この野望を実現するために、一緒に未来をつくれる、未来を共感し合える仲間を集めていきます。僕もアグレッシブさを忘れず、アグレッシブな気概を持つ人を採用していきたい。

 人がやらなくてもいい仕事を減らし、人がやるべきやりたい仕事をするようになる将来の日本の姿を想像すると、もっとアクティブで、もっとクリエーティブな人が大勢いるような社会になると思います。今までの日本にはなかったことですが、時代が変容すれば、日本人の在り方も変わるのです。

機械ができることは機械にさせるサービスを開発しながら、人が人にしてほしいと思うことを人の仕事にできる社会をつくりたいという伴貴史氏(写真:山本祐之)
機械ができることは機械にさせるサービスを開発しながら、人が人にしてほしいと思うことを人の仕事にできる社会をつくりたいという伴貴史氏(写真:山本祐之)

【講師の添削付き】新規・既存事業の育成・強化セミナーを9月に開催

 人口減少をはじめ、中小企業を取り巻く経営環境はここ数年で大きく変化し、長年続けてきた事業の停滞に悩む経営者が増えています。9月25日(水)に開催の本セミナーでは新規事業を生み育てるポイント、既存事業に新たなアイデアを加えて利益を賢く創出する発想法を詳しく伝授します。

 ベストセラー書籍『起業の科学 スタートアップサイエンス』の著者で、新規事業開発支援を手がける田所雅之氏の講演やワーク、オンライン・ファッション・レンタルのエアークローゼット天沼聰社長の講演を通して、時代の変化に即した事業の見つけ方・育て方を学びます。


本講座の特徴

・事業のアイデアや売りとなる魅力を見つける「発想力」「視点」が身に付く!

・新規事業の育て方だけでなく、既存事業を強化する方法も分かる!

・受講者が会場のワークでアイデアをまとめたリーンキャンバスを後日、田所氏が添削してお返しします!

田所氏(左)と天沼氏(右)

 詳しい内容は以下のリンク先をご覧ください。

■【講師の添削付き】新規・既存事業の育成・強化セミナー

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