起業の態勢にあって、起業したい気持ちもあるのに、なぜ起業家たちのコミュニティーに入れなかったのでしょうか。
伴:コミュニティーに参加してみると、当時僕は24歳でしたが、同世代の起業家はたいてい学生起業家で、彼らと話をすると「帰国子女みたいなキラキラした人が趣味的にスタートアップやれていいよね」というようなことを言われるのです。自分としてはそんなことはないと思っていたのですが、はた目から見たら覚悟が違うように思われていたのでしょう。
僕としては、起業といっても、投資銀行に勤めていたときに身に付けたコンサルティング業に甘んじると、本質からそれる気がしていました。それに負けず嫌いなこともあって、スタートアップとしてやるからには、スタートアップの戦い方で、スタートアップの中で戦いたかったのです。
スタートアップといえば、やはりIT(情報技術)です。ITで必要とされるサービスを開発して一気にシェアを取っていく。そういう気持ちは強く抱いていました。
そこで、プログラミングを勉強して、ITで仕事をする土台が出来上がったタイミングで、では本質的に何をしたいのか、なぜ起業したのかと聞かれたらどう答えるかと考えて原点回帰し、日本のプレゼンスを上げることを大きな目標としました。
日本の総人口が減るのは明白で、経済力も落ちていく。だとすると、まず人がやらなくてもいい仕事を減らす、仕事を効率化するという仕事があります。その先には、人と人がやる仕事を最適にマッチングさせるという仕事があります。
エンジニア以外でもボットをつくれるツールを提供
チャットボット開発ツールを開発し提供するというアイデアは、そこから生まれたのですか。
伴:海外にいたとき、LINEのような中国のチャットアプリ「WeChat(微信)」を友達同士でよく使っていたのですが、そこに言語を自動処理するチャットボットが入っていて、大変便利なサービスだなと感じていました。
友達と「北京から上海に飛ぶよ」というやり取りをしていると、自動的に画面に航空券一覧も出てくるようなイメージです。これまでなら、会話をしつつもほかのアプリに移って調べるという作業が必要でしたが、それがチャットの内部で完結するのは素晴らしいと思いました。
これをうまく使えば、企業での問い合わせ業務やマーケティング業務の無駄を省けると考えました。例えばLINEなどは近い将来チャットボットを導入するだろうし、そうなればこれをプラットフォームにして多くの企業が利用するとも思いました。LINEは、一般ユーザーと企業がつながりやすい仕様ですので、チャットボットが最も普及しやすいプラットフォームだと思います。
ところでチャットボットをつくるのはエンジニアですが、エンジニアがいなくてもこうした新しいサービスの恩恵を受けられるようにしたいと考えました。そこで簡単にチャットボットを開発できるツール「hachidori」を開発したのです。そのうち案の定、LINEでチャットボットを使えるようになりましたので、hachidoriをLINEに組み込めるようにすると、hachidoriの需要は相当増えました。
hachidoriを使って、格安航空券を販売しているエアトリや、夜行バス・高速バスのオリオンバス、また「名古屋市子ども・若者総合相談センターLINE相談」などの問い合わせ・相談業務用のチャットボットを開発しています。hachidoriを使えば、企業自らチャットボットを開発できますが、これらは当社で請け負って開発しました。
Powered by リゾーム?