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CtoC市場はまだなかった


ユーザーが増えないという状況から、何をどのように乗り越えましたか。


丸林:実はそれがよく分からないんです。途中でグッと取引が伸びているんですが、そこで何をしたかというと特にないんです。Creemaには良い作品が集まっているという自負はありましたので、実行したことといえば、ECサイトとしてもっと機能を高めることでした。

 例えばCreemaのリリース直後はクレジットカード決済ができませんでした。今思えばあり得ない状態ではありますが、決済を便利にする必要があるとか、良い作品に出合うための検索をもっとしやすくしようとか、いわゆるプロダクト改善に力を入れていたのです。

 Creemaは2010年5月に始まっていますが、当時はまだCtoCのマーケットがなかったんです。「Yahoo!オークション(現・ヤフオク!)」はありましたが、それはヤフーという皆が知っている大企業が運営している、オークションというサービスです。エニグモが運営する「BUYMA」はありましたが、CtoCの仕組みそのものが一般化していない状況だったと思います。

 背景として、個人のクリエーターの作品を個人が直接購入するという文化もなかったわけです。アートのコレクターはいましたが、それでもギャラリーを通して購入する方が多かったし、生活に寄り添うアクセサリーや洋服を個人のクリエーターから買うという発想は少なくとも一般的ではありませんでした。

 洋服なら、ファッションビルや百貨店に入っているお気に入りの店で買っていましたよね。僕が大学を卒業したのは04年ですが、まだ若干バブルの残り香的なテンションはあって、例えば彼女に誕生日プレゼントをとなったら、ブランドショップに出向いて頑張って少し高い財布を買ってあげるようなことが当たり前でした。

 こういう空気があるときに、個人のクリエーターの作品を直接あなたが買ってください、という話をされても、よく分からなかったと思います。それが変わったのは、11年以降だと思います。

Creemaがスタートした2010年ごろは、写真のようなクリエーターが手作りする作品を、個人が直接購入するという文化はまだ希薄だった(写真提供:クリーマ)

 文化的に遠い印象だったものを身近にするために思い付いた作戦は、ネット上だけではなく、リアルな場も使ってみるということでした。

 手始めに小さなイベントを開催してみました。その後、だんだんとイベントの規模は大きくなり、ある程度の実績も出せるようになってきました。すると今度は百貨店やショッピングビルから声が掛かって、そこにポップアップストア(期間限定店舗)が出せるようになり、今では実店舗を出しています。

 僕たちがネット、イベント、実店舗と展開していくと、外部からはクリエーターと個人がつながる市場が盛り上がっているように見えたのでしょう。この市場に大企業も参入してきました。このあたりの現象は全て一気に起こっていて、いろいろな要因が混ざっていますので、何が起爆剤だったのか、よく分からないのです。

最初のイベントはどのようなものでしたか。


丸林:Creemaが始まった約半年後の10年12月にイベントを開催しました。場所はドイツです。

えっ、ドイツなんですか。


丸林:面白いかなと思って(笑)。ドイツで一番人気を取る日本のクリエーターを決めるコンテストをやってみようと「HANDMADE IN JAPAN AWARD(ハンドメイドインジャパンアワード)」というイベントをベルリンとデュッセルドルフで開催しました。

 現地のカフェやギャラリーに力を貸してくださいとさまざまな手を駆使して協力を得て、開催しました。器や絵画、クレイアートなど、30人のクリエーターによる作品を並べました。このときのことは時事通信などに取材してもらいましたが、やはりこれをやっても日本ではなかなか広まりません。