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丸林:多世代版シェアハウスの事業は「今日でやめる」と宣言して終わりにしました。仲間の2人はキツネにつままれたような顔をしていましたが、これはいい事業だけれど、何か別の事業で成果を上げて、さらに上場するなどして会社の信頼を得てからやったほうがいいと決めたのです。

 この事業に失敗しましたので、次の事業のアイデアを幾つも出しました。今では、他社が手掛けて立派な事業に育っているものも多くあります。

圧倒的に情熱を注げる事業がCreemaだった


Creemaを始められた理由は、丸林さんが学生時代にプロとして音楽活動をしていたという経験も大きいのではないでしょうか。


丸林:そうです。その経験があったからこそ、この事業には圧倒的に情熱を注げると感じたのです。

 新規事業を立ち上げる際、大企業もそうですが、多くの人が頭で考えすぎているところがあるような気がしています。ですが、完全ゼロイチの新規事業は、「人生を懸ける」と本気で思えるようなテンションとぶっ飛んだ頭でやらないと、結果を出すのは本当に難しいと思っています。

 ですから、愛や情熱を注ぎ込めるものをやるべきだと思いました。自分の原体験をベースに考えても、Creemaは自分が人生を懸けて取り組めるテーマでした。世の中にとって意味がある事業だと確信していました。であれば、一緒にやる仲間にもその感覚を共有してもらえると思いました。

 当時の日本では、まだCreemaのようなサービスを本格的に推進している人たちはいませんでしたので、ここは「取れる」とも思いました。実行するからには、ナンバーワンになって、この市場は自分たちがつくったんだと言えたほうがうれしいし楽しいし、誇りにも思えます。ナンバーワンが目指せることも、取り組む事業を決める理由として重要であると僕は位置付けています。

 ただ、市場規模などは考えていませんでした。とはいっても、インディーズで活動しているクリエーターがものすごくたくさんいることは自分の体験からも分かっていました。

 例えば音楽の分野では、大手のレコード会社からデビューしても、オリコンランキングの上位に入る人はごく少数です。そこに至らず、もがいている人のほうが圧倒的に多い。また、そもそもそこに価値を見いだしていない人もどんどん増えている。音楽の世界だけでなく、絵でも服作りでも同様だろうと。僕たちは、そういう人たちにサービスを提供できると思ったのです。

場をつくっても、クリエーターたちが実際に作品を登録しなくては始まりません。どうやって出品を増やしましたか。


丸林:最初は、ギャラリーやイベントで、あるいは友人のツテを使ったりして、クリエーターに直接「こういうサービスを始めます」と話して回ったんです。すると、130人のクリエーターが600の作品を登録してくれることになり、事業を始めることができました。その後、クリエーター側からの期待は高まって、僕たちが直接声を掛けている以上に増えていきました。

一方の、作品を購入するユーザーはどうやって集めましたか。


丸林:ところが、こちらは全く集まらないのです……。本当に最初の2年ぐらいは、身内が買ってくれているというレベルでしかなくて、今振り返るとよくそのまま事業を続けたな、という状態でした。

 会員登録はしてくれても買ってはくれないという状態も長く続き、そこは壁でした。僕たちとしては、優秀なクリエーターの良い作品しか集まっていないので、なぜこれが売れないんだろうという感覚だったのです。

Creemaは、130人のクリエーターが登録した600点の作品から始まり、今は約15万人のクリエーターが約700万点の作品や製品を登録している(写真提供:クリーマ)