クリエーターが手作りした装飾品や衣料品、食器や家具、アートといった作品・製品のマーケットプレース「Creema」を開発運営するクリーマ。PCやスマホでのEC(電子商取引)とイベント、店舗で展開中だ。「ゼロから愛情と情熱を注ぎ約9年をかけ、15万人のクリエーターによる700万点以上の作品が集まり、アプリも800万ダウンロードを突破したが、まだこれから」という創業者の丸林耕太郎氏に起業の気概を聞いた。
ハンドメイドのマーケットプレース「Creema」はどのように設計したのですか。
丸林:基本機能として、ユーザーがクリエーターの作品を探せて、直接買えて、買った後にクリエーターやほかのユーザーとコミュニケーションできるネット上のプラットフォームをつくりたいと考えていました。
商品一覧のページがあり、商品詳細のページがあって、カートに入れて決済するという基本の遷移は「ヤフオク!」などとも同じですが、ものづくりをしているクリエーターの存在感がある世界観を大切にしました。クリエーターが、作品を出すのをうれしいと思ってもらえる場であり、ユーザーが作品の魅力を存分に感じることができるデザインとユーザーインターフェースです。

クリーマ代表取締役社長/クリエイティブディレクター。1979年、横浜市生まれ。慶応義塾大学在学中にプロとして音楽活動に取り組むも、22歳のときに出会った大物経営者から強烈なインスピレーションを受け起業家に。2009年に現在のクリーマを創業。“本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する”ことを目指しCreemaを立ち上げる。店舗は、「暮らしとクリーマ(二子玉川ライズ S.C.)」「Creema STORE(ルミネ新宿2、札幌ステラプレイス)」がある。16年には海外展開も開始、日本/アジアのクラフト市場に新しいうねりを起こし続けている(写真:山本祐之)
最初の“多世代版シェアハウス”事業は失敗
丸林さんは、クリエーターのための場をつくろうと起業したのですか。
丸林:いえ、起業するうえでさまざまな事業を検討しています。初めて取り組んだ事業は失敗しました。ネットの広告代理店を辞めて、独立し、3人で始めた事業でしたが半年で撤退しています。
最初の事業は“多世代版シェアハウス”の提供でした。例えば、地域とつながりたい学生、シングルマザー、お金も元気もあるけれど独り身の高齢者の方々。そんな人たちが緩やかなコミュニティーを形成しながら生活するアパートメントを造りたいと考えたのです。
マンションのように独立した居室が基本ですが、ハード・ソフト面でそこにコミュニティーを形成できる住まいを造りたいと。人や世の中を元気にできる本当に意義ある事業だし、日本にプレーヤーもいなかった。
しかし多世代版シェアハウスは難しすぎました。
創業メンバー3人で、大地主さんに「あなたの土地を僕らに預けてください、こういう建物を建てて運用すれば、地域になくてはならない存在になるし、これぐらいの利回りも確保できます」というような話をして回りました。「半年で1つも受注できなかったら厳しい」と言いながら取り組んでいたのですが、半年たっても見事に1つも受注できませんでした。
地主の方々は「君たちの挑戦は素晴らしい」と言ってくれます。ただ、「先祖から預かった土地をそういったチャレンジングなことには使えないので、知人を紹介しましょう」と言われます。そうやって本当にたくさんの人に話をして、「素晴らしい」「頑張れ」と言われ続けて結局受注できませんでした。
僕自身にも昔からの友人に大地主がいましたが、彼らに「『前例はないけれど革新的な建物を造ろう』とはなかなか言えないな」ということにも気付き始めていました。このままでは起業のスケジュールを守れないと思いました。起業するときに、最長で10年での上場を目指していたのです。この状況だとその期限を守れないばかりか、集まってくれた仲間への約束も果たせないと考え、撤退を決断しました。
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