全7319文字

携帯電話販売で創業、着うたサービスなどを経て、「LINEマンガ」などに電子書籍を流通させる電子書籍取次No.1企業になったメディアドゥ。同社は、会社を大きくしていく過程で「文化に貢献する」という命題を見付け、書籍市場の再興を目指す。そのためには、デジタルと紙の良いところを持つ“新たな本”を技術で生み出すことがカギというメディアドゥホールディングス代表取締役社長 CEOの藤田恭嗣氏にその思いを聞いた。

担っている役割の大きさに比べ、知名度の低い企業があります。ぶしつけではありますが、メディアドゥもそのうちの1つではないでしょうか。


藤田:僕たちは目立つべきではないと思っています。目立つべきは、作品を作っている人や届けている人であって、僕たちは裏方として、オペレーションを提供して、より作品を届きやすくし喜んでいただくべきだと思っています。

 ただ、目立つ必要がないのは一般の人たちに対してです。関連の業界の方々に対しては、僕たちの考え方をPRしていきます。

 まず、作品を流通させたい出版社や作家先生の皆さんに対して、安心して継続的に作品を作り続けてもらえるよう、僕たち裏方が体制を整え、売り上げや利益を上げて事業を継続していることを見てもらいたいと思います。僕たちが潰れそうな会社だと、皆さん、不安でしょう。業界の方々には、安心材料として、それなりの組織ですよということを理解してもらいたいと思っているのです。

 そのために、会社のステージが1から2、2から3へと上がり、それまでと違う世界が広がっていたときには、その新しいステージで既に経験を積んだ人材を登用して、そのステージならではの戦い方ができるようになっているよ、という姿を見せるようにしています。

藤田恭嗣(ふじた・やすし)
メディアドゥホールディングス代表取締役社長 CEO、メディアドゥ代表取締役会長、メディアドゥテック徳島代表取締役社長などを兼務。1973年徳島県木頭(きとう)村(現・那賀町)生まれ。94年名城大学3年生のときに携帯電話販売を始める。96年大学卒業時にフジテクノを設立、99年メディアドゥ設立、2004年着うた配信サービスを開始、06年電子書籍配信サービス開始、13年東証マザーズに上場、16年東証1部に上場変更、17年メディアドゥホールディングス設立。19年保有する株の一部5万2000株を役員や社員に贈与した(写真:清水盟貴)

人が「気付き」「面白い」「入りたい」と思う企業でいたい


 今、ベンチャー業界ではメディアドゥのようになりたいと思ってくれている人たちがいます。レガシーな世界にIT(情報技術)ベンチャーとして参入してプレゼンスを得ている例として、メディアドゥは分かりやすいようなのです。一方で、今後当社に必要な人材に当社の存在に気付いてもらい、面白いと感じてもらい、入りたいと思ってもらう。この循環も大事だと思っています。

 さらにこの循環を成立させるために、僕たちにはもう1つ努力が必要です。当社に興味を持ち、入りたいと思ってくれる人材が、それまで年収1500万円あったけれども、面白そうだから1000万円になっても入りたいと思ってくれることもあるでしょう。ですが、僕たちは最低でも給料は下げず、できれば上がるという環境をどうつくれるかだと思っています。