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若くない人をどうやってイノベーター人材に育てるかが大切

白石:“組織”として、イノベーター人材をどう育て、あるいはどう生かしていったらいいのでしょうか。

北野:イノベーションというと、つい「若い人」を想像しがちだと思います。しかし、日本在住のある有名なアナリストと対談したときに出たのは、「新卒採用なんてどうでもいい。シニアのほうがはるかに多いのだから」との意見でした。むしろ、若くない人をどうやってイノベーター人材に育てていくかが大切なのではないのでしょうか。

ワンキャリア 最高戦略責任者の北野唯我氏

能村:新卒採用はイノベーションには馴染みません。むしろ、イノベーター人材が育つ多様な活躍ルートと人材マネジメントが必要です。経済産業省も典型的な大組織で、4年制大学の新卒も、大学院卒もドクターも、入省すればすべて1年生として、組織のイロハ、役人のイロハをたたき込まれます。内部公平性重視型で、これではイノベーター人材は育ちません。さすがに省内でも見直す声があり、早い段階でエキスパートとジェネラル職を分けるような制度を模索中です。

森本:私の子育て経験で言うと、長男は初めての子供ということもあり、ある種、既成の枠の中で育ててしまったところがあります。例えば、絵を描く流儀のようなものを教えてからスケッチブックに描かせたのです。

 しかし、次男の育児はベビーシッターに任せたところ、彼女はどちらかというとあまり枠にはめない接し方をしてくれます。次男には、模造紙を4枚つなげて2畳分くらいの大きな紙の上で描かせていました。今、兄に絵を描かせると、目の前のものを模写するのは非常にうまい。一方、弟は何も見ずに潔く、想像を超えるすごいものを描いてくる。思考の仕方が違っているのですね。

北野:米グーグル社の副社長を務めた村上憲郎さんに「グーグルには天才はたくさんいると思いますが、どうやってマネジメントしているのですか」と聞いたところ、「放牧です」と。やはり、天才は管理できないのでしょう。

能村:経団連は昨年、イノベーティブな新規事業創出において、「会社本体と意思決定や評価制度を切り離した『出島』を立ち上げる方策が有効」と提言しました。しかし、管理型の出島も結構あるようで、実質を見る必要があるように思います。

経済産業省 産業人材政策室 室長の能村幸輝氏

田中:イノベーションを阻害する最大の要因は組織文化です。上長がいるから空気を読むとか、新卒一括採用および直後の新人研修とかは、管理優先の組織文化そのものです。ですから、組織がイノベーター人材を「のびのび教育する」「放牧する」にしても、ある程度のポジションにある人が、今までの組織文化を疑ってかかり、それを壊す痛みを承知の上で、イノベーション環境をどれだけ本気で作れるかがカギとなってきます。

 もっとも、企業文化を変えるには時間がかかるし、同様に、イノベーションを起こすまでには、検討、会議、決裁などのプロセスがあって、着想から実現までタイムラグがある。企業規模が大きくなればなおさらです。そのタイムラグを我慢できない人は、いったん組織を出て、イノベーションのセンスを磨き続けたほうがいいでしょう。