全6100文字

情報開示をするメリット/しないデメリット

水野:企業の成長にとっての具体的なメリット。これが明確にならなければ企業もなかなか開示をする気にならないかと思います。あるいは投資家重視の流れの中で、情報開示をしないことにどのようなデメリットがあるのか。

守島:中途採用の重要性が高まっていく中で、これからは株主のみならず将来の従業員、つまり外部労働市場にいる人材に向けての人事・人材情報の開示も重要になると思います。

 人にどこまで投資しているかを企業が公開することで、より優秀な人が会社に入ってくるようになり、結果的に企業の人事管理のあり方の改革も進む。この好循環が起こらなければ、日本の人事改革は、企業の内部でどれだけ進めるといっても難しいでしょう。情報開示によって外部の力を使い、内部の人事管理のやり方がどんどん良くなる流れができることを願っています。

 裏返して言えば、情報開示をしなければこうしたプロセスも起こりませんし、いつまでたっても年功序列や新卒一括採用のまま、昔ながらの人事管理が進んでいく可能性があります。人事管理の改革を促すプレッシャーを高めるという意味でも、情報開示は重要です。開示しない企業は改革のチャンスを逃してしまうように思います。

井口:繰り返しになりますが、投資家としては経営戦略達成の確度を高めるために人材戦略に注目しますが、情報の開示がないと、判断ができません。

 企業価値を高めたい企業であれば、経営目標を実現する上でどんな人材戦略をとっているのかは非常に重要な箇所となるはずです。ところが、統合報告書を出している企業の場合でも、冒頭に「経営戦略の中心は人材戦略である」との経営者のコメントがありながら、ほとんどの場合はその後のページで、具体的に人材戦略について触れられていません。

 情報開示に積極的な会社は、より機関投資家の投資対象になりやすいですし、議決権行使などでも優位になると思います。その意味でも、情報開示をおろそかにすべきでないと思います。