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最先端の遺伝子治療薬をはじめ、革新的な医薬品開発に取り組んできたノバルティスグループ。同社は企業風土や職場環境、人材育成においても様々な革新的な取り組みをしていることでも知られる。日本法人であるノバルティスファーマの経営トップであり、自ら率先して育休を取得するなど多様な働き方の実践に取り組む代表取締役社長の綱場一成氏が、革新的な企業文化の醸成と人材育成のあり方について語った。

[この記事は「ヒューマンキャピタル2019」(主催:日本経済新聞社 日経BP、2019年5月29~31日、東京国際フォーラム)での講演をまとめたものです]

革新的な企業であるためには、企業文化の醸成が不可欠

 バイオテクノロジーや遺伝子テクノロジーなど先端技術を活用した医薬品の開発競争が世界的に激化する中、ノバルティスグループは業界でも注目を集める革新的な医薬品開発を続けている。同社が開発した遺伝子治療薬、「CAR-T細胞療法」はその一例だ。がん細胞などの異物を攻撃するT細胞を患者の体内から抜き出し、遺伝子改変によって攻撃力を高めた上で体内に戻すという治療法で、このほど日本でも承認され大きな話題となった。

ノバルティスファーマ代表取締役社長の綱場一成氏(写真:稲垣純也)

 このような医薬品開発を進める上で研究開発力が求められるのは当然だが、それを支える人材や企業文化も重要だ。ノバルティスファーマ代表取締役社長、綱場一成氏は基調講演の冒頭、遺伝子治療薬について写真や動画を交えながら紹介するとともに、同社の人材や企業文化について語りはじめた。

 「我々が開発したのは、小さなお子さんが発症し2歳でほぼ100%亡くなってしまう『脊髄性筋萎縮症』という難病の治療薬です。1回の注射だけで劇的な効果が生まれ、患者さんたちは普通の子どもたちと同じように歩いたり走ったりできるまでに回復します。我々はこのような革新的な医薬品をつくることで、人々の幸せと命に携わりたい。それによって人類史に刻まれるような会社になりたいと本気で考えています。

 しかし医薬品自体の質が優れているだけで、人々を幸せにすることはできません。世界中の患者さんたちのために今、自分に何ができるかを常に考える人材がいて初めて実現するものです。それを支える企業文化も欠かせません。企業文化の醸成と人材育成のために我々がどんな取り組みをしているのか、本日はご紹介したいと思います」(綱場氏)