全3784文字

兼業が上手くいかない理由

 一方、上手くいっていないケースで最も多いのは、導入理由が不明確・情緒的であったり、位置付けが場当たり的になっていたりすることだと団氏は指摘する。

 「よく見られるのが、会社のビジョン(雇用思想)を『社員は家族=一生面倒を見る』とし、終身雇用をメインシステムに位置付けているケースです。メインシステムを支えるサブシステムには「年功的な人事運用」「内向きな賃金テーブル」「新卒一括採用&定年制」を据え、各種制度には「積立型退職金」「社宅・各種研修」「賃金外手当の充実」などがあります。この各種制度の中に、『時代の要請があるから』との場当たり的な理由で、全体の構造や位置づけを明確にしないまま、唐突に『兼業許可』を入れているのです。これでは兼業制度は上手く機能しません」(団氏)

従来企業の雇用思想

必要なのはオープンに検討すること

 団氏は、兼業導入の検討に際して具体的にどうすべきか、こうアドバイスする。

 「まずは『オープンに検討すること』に尽きます。繰り返しになりますが、議論すべきは、兼業の導入理由と位置付けの明確化です。自社がどういったビジョン(雇用思想)とメインシステムで組織を回しているのか。経営思想、雇用思想を支えるサブシステムが本当に機能しているのか。サブシステムを下支えしている制度にはどういったものがあるのか。そして、兼業を導入するとしたら会社システム内のどこに位置付けるべきなのか――こういったことをオープンに話し合うことが大事です。兼業導入を検討するということは、会社と社員の関係性を考え直すことにもつながります。それこそが、現在の日本企業に求められていることではないでしょうか。

 逆に絶対に避けたいのは、『時期尚早』として議論もしないことです。やる気のある従業員からすると『会社は何も考えていません』という風にしか見えないからです」(団氏)