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「数値目標ありきはおかしいのではないか」

★テーマ1 数値目標の達成だけに惑わされず、本質的な働き方改革をいかに実践するか

寺山:まずディスカッションしたいのが、働き方改革で打ち出されている目標値についてです。労働時間の短縮をはじめ、様々な目標値が出ています。でも一番肝心なのはお客様の満足度を高めたり、アウトプットの質・量を高めたり、生産性を引き上げたりすること。それが従業員満足度の向上にもつながるのではないかと。数値目標ありきで、生産性向上や従業員満足などが置き去りにされているのはおかしいのではないか、というのは私自身の問題意識でもあります。メルカリの唐澤さん、どうお考えですか?

唐澤:数値目標以前に、そもそも働き方改革という言葉を社内で聞いたことがないんですね。先ほどもお話したように、私たちのバリュー・カルチャーとは何かを日々議論していて、そこで私たちらしい働き方を探し続ければいい。労働時間も、短縮のための目標は掲げたことがありません。もちろん法律は守りますがその範囲の中で一人ひとりに任せる。アウトプットを最も出せる働き方を自分で考えてやってねと。

 労働生産性向上についても、じつは効率化だけの問題ではなくて、アウトプットが高まれば生産性も上がるはずなんですね。だから失敗を恐れず「Go Bold」に大きな成果を取りに行こうよと。そうすれば生産性もお客様の満足度も自然と上がっていく。そういう順番で考えています。

寺山:経営者にとっては「利益」が最も分かりやすく目指しやすい指標であるわけですが、メルカリさんはそれとは違った、意欲や成果を判断する指標をお持ちなんでしょうか?

唐澤:私たちは「OKR」と呼ぶ目標管理制度を導入しています。手が届きそうな目標ではなく、意欲的なストレッチ目標をクオーター(四半期)ごとに設定して、その達成を目指すという感じです。ただ、あくまで「Go Bold」にチャレンジする姿勢が大事で、目標の達成度合いを評価はしますが、報酬には連動させないようにしています。目標達成を単純に報酬連動させればさせるほど、目標を下げてしまうと思うので。むしろ高い目標を掲げてチャレンジした方がいい。その姿勢やプロセスを認めたいと考えています。

寺山:イトーキでは、時間短縮とは違った働き方改革に取り組んでいらっしゃると思います。数値目標についてはいかがですか。

八木:寺山さんがおっしゃるように、働き方改革で労働時間の機械的な短縮だけが目標になっていることへの疑問は、このプロジェクトの発端の一つでした。私たちは、最終的に向上したいKPIを、企業目線や働き手目線など複数の観点で把握するようにしています。

 例えば、とにかく残業時間を短くしようとお昼休みまで削って働くと、逆に生産性が下がってしまうということが起こります。しっかり休んでいる人とそうでない人では、休んでいる人の方が生産性もワーク・エンゲージメントも高い。

 このほか、笑顔や雑談のある職場の方が心の健康状態が良いという調査結果もあります。労働時間短縮のような分かりやすい目標を達成しようとするだけでは、実はパフォーマンスを高めたり働きがいを醸成したりする要素が切り落とされてしまう可能性があります。それをなるべく落とさないようにするには、管理しやすい目標とは別に、最終的に何を目指しているのかを踏まえて本来の目標も見ておく必要があるわけです。