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人材獲得競争が激化するなか、働き方改革と生産性向上の両立、人材の多様化に対応したマネジメントなど、企業の課題は山積している。メルカリ、ANA、パナソニック、オリックスなど先進企業の人事担当の幹部が、社員の働きがいやエンゲージメントを引き出すマネジメント、コミュニケーションの質的向上などについて活発に議論を交わした。[この記事は「ヒューマンキャピタル2019」(主催:日本経済新聞社 日経BP、2019年5月29~30日、東京国際フォーラム )での講演をまとめたものです]

<パネリスト>
メルカリ
執行役員VP of People & Culture  唐澤俊輔氏

Fringe81(Unipos)
代表取締役CEO 田中弦氏

PwCコンサルティング
ディレクター 北崎茂氏

パナソニック コネクティッドソリューションズ社
常務 人事・総務担当 大橋智加氏

全日本空輸(ANA)
取締役常務執行役員 グループ女性活躍推進 総括 山本ひとみ氏

オリックス
執行役 グループ人事・総務本部長 三上康章氏

イトーキ(FROM PLAYERS)
部長 ソリューション開発統括部 ソリューション開発部 八木佳子氏

<モデレーター>
日経BPコンサルティング
代表取締役社長 寺山正一

寺山:まずはパネリストのみなさんに、自社の働き方の取り組みについて簡単にご紹介いただきたいと思います。

八木:本日は「FROM PLAYERS」事務局として参りました。FROM PLAYERSは、「ワークからプレイへ」をキーワードに、働き手目線で見たときの良い働き方とは何かを考え、「いいはたらく」を実現することに取り組んでいる11の異業種企業が集まった企業横断型プロジェクトです。

 本来、働き手主体の活動であるはずの「働き方改革」の具体的な内容に、やらされ感を感じている方は少なくないと思います。私たちもそうでした。FROM PLAYERSでは、自分たちが自発的に取り組める働き方改革を模索し、さまざまなソリューションをトータルで提案することを目指しています。

イトーキ(FROM PLAYERS) 部長 ソリューション開発統括部 ソリューション開発部の八木佳子氏 写真:稲垣純也(以下同)

三上:オリックスは1964年、前回の東京五輪の年に、リースを祖業としてスタートした会社です。当時の社員数はわずか13人だった当社も、いまでは海外も含めて約3万2000人もの社員を抱え、融資、投資、生命保険、銀行、自動車関連、不動産、環境エネルギーなど多角的な事業を展開しています。人材の多様化も進んでおり、新卒と中途の割合は6:4、男女比率も6:4、女性社員のうち3割はワーキングマザーです。

 足元の業績は堅調で、2019年3月期は10期連続の増益で5期連続の過去最高益となりましたが、「良いときほど前向きな改革をすべきだ」というトップの思いのもと、2016年に職場改革推進プロジェクトを立ち上げました。プロジェクトを実効性の高いものにするため、トップダウンだけでなくボトムアップでの改革を重視し、グループ10社・約200人の社員による委員会を発足。半年かけて議論した120の施策をCEOへ直接提言し、これまでに80の提言が実現に至りました。

 提言した内容の実現にあたっては、まずは多様で柔軟な働き方につながる人事制度を中心に取り組み、その次のステップとして、働く場所の柔軟性を高めるべくIT設備の充実化、外部サテライトオフィスの拡充等、自席以外でも働けるインフラ整備に取り組みました。

 ただ、働きやすさばかりが良くなっても、それが必ずしも働きがいやエンゲージメント向上に結び付くわけではありません。プロジェクト4年目となる今期は、いかに働きがいやエンゲージメントを醸成していくかというフェーズに移り、全社をあげて行動改革に取り組みたいと考えています。

オリックス 執行役 グループ人事・総務本部長の三上康章氏

山本:本日、私からはANAホールディングスと全日本空輸(ANA)双方の取り組みをご紹介させていただます。ANAにおける働き方改革で重要な点が3つあります。「経営トップの強いコミットメント」「従業員の意識改革」「制度や仕組みを支える環境整備」です。

 あらゆる改革には、経営トップのコミットメントが欠かせません。2014年には女性活躍推進に向けた「ポジティブ・アクション宣言」を、翌15年には多様な個性を活かして一人ひとりが輝く企業を目指す「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を発表。さらに16年には「働き方改革宣言」と「健康経営宣言」を行いました。こうしたトップのコミットメントを前提とした上で、「意識改革」と「業務改革」の両輪で改革を推進しています。

 目指しているのは、社員一人ひとりが創造性を発揮しながら、働きがいを感じられる働き方です。そうして労働の質が高まっていくことは、新たなサービス品質の実現、新たなサービス創出につながると考えるからです。

全日本空輸(ANA)取締役常務執行役員 グループ女性活躍推進 総括の山本ひとみ氏 

大橋:弊社はパナソニックグループにおいて、主にBtoB事業を担うカンパニーです。ご存じの通り、パナソニックは家電中心で成長してきた企業であり、今年創業101年目を迎えます。ただ、歴史あるさまざまな制度や風土が、残念ながら時代の変化においてそぐわなくなっている面もあります。

 弊社はBtoB事業を担うカンパニーとして、グループに先駆けて顧客志向の組織への転換を目指すためにも、働き方改革に幅広く取り組んでいます。具体的には労働時間削減はもちろん、ワークプレイス改革、ICTの利活用、1 on 1ミーティングの導入などです。試行錯誤を重ねながら愚直に取り組んでいるところです。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 人事・総務担当の大橋智加氏