社長就任10年、その間の成長をどう評価しますか。


古澤:難しいですね。特に光機能事業については請負加工の域を脱し切れておらず、試行錯誤が多い状況です。

 ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜と呼ばれる透明導電膜の蒸着技術も持っていますので、それを何かに使えないかと考えているところです。センサーの表面にこの加工をすれば曇りにくくなりますが大きなビジネス展開にはなっていません。

 ただ、この事業分野では「チェレンコフ望遠鏡アレイ」の集光器を手掛け、2018年にスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島に完成した第1号機に搭載されました。

 集光器は、曲がった面に高精度で均一に金属を真空蒸着する必要があり、これがかなり難しいんですね。取引は、このプロジェクトに関わっていた方に、そういえば確かこの加工ができる人が東海光学にいたなと思い出していただき、連絡をもらったのがきっかけになっています。

2018年にスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島に完成した「チェレンコフ望遠鏡アレイ」の集光器(写真)に東海光学の技術が使われた(写真提供:東海光学)
2018年にスペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島に完成した「チェレンコフ望遠鏡アレイ」の集光器(写真)に東海光学の技術が使われた(写真提供:東海光学)

 人との出会いで新しいお客様が見付かったケースはほかにもあります。

 海外の展示会の食事会で、たまたま当社の社員が座った隣に、レンズクラフターズという今では大きなメガネ店チェーンの創業者が座られて、当社の高屈折率レンズのお話をしたところ、「それはすごい」とその方の人脈でいろいろと会社を紹介していただいたこともあります。

ところで、採用が難しい時代といわれますが、中堅企業である御社ではいかがですか。


古澤:開発系人材の採用が難しくなっていると感じますが、18年も19年も、高卒、大卒、院卒とそれなりに採れています。

 特に高卒者を採用できたのは、工場にとって大変うれしいことでした。近隣に大手企業が多くある中で、東海光学を選んでくれました。当社の会長が16年まで2期6年、岡崎商工会議所の会頭を務めていた影響もあるかもしれませんが、当社の知名度は地域の皆様のおかげで上がってきているのかなと感じています。

原動力はチャレンジする・勉強するというDNA


先ほど、経営理念の第1に「顧客第一主義」があるというお話がありました。2番目には「全社員の経営参加」を掲げています。どのような形で、社員が経営に参加しているのですか。


古澤:経営計画発表会や社員旅行の開催を通じて、全社一丸の体制づくりに取り組んでいます。また、80周年を記念した社史も作成しており、これもその一環です。

 労務環境については、定年を60歳から63歳に延長しました。基本給などはそのままで、勤められる期間が3年延びるというものです。育児休業は3歳まで、短時間勤務は7歳までと大手企業並みにしています。ジョブリターン制度も導入しています。育児のほか、配偶者の転勤や介護など、やむを得ない理由で退職した方でも、一定の条件を満たせば再雇用するという制度です。

 こうした取り組みを進める中で、18年9月に終わった62期の売り上げは110億円。遡ると、61期が106億円、60期が100億円、59期が91億円でした。飛躍はありませんが、業績を伸ばしてこられたのは、全社一丸の一つの成果だと受け止めています。63期は120億円を目指します。

 よくいわれることですが、まさに「企業は人なり」です。当社がこれまで80年間やってこられたのは、やはり人材のおかげです。そこに脈々と受け継がれているのは、チャレンジする、勉強するという、先輩方が築き上げてきたDNAです。これを私たちも受け継いで、今後の世代につないでいかなくてはならないと思っています。

 同時に社員には、最後には自分の城は自分で守ってほしいとも思っています。自分たちの考え方を大事にして、自分たちでやっていくんだという気持ちを失ってほしくないと考えています。

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