スマホゲーム、「引越し侍」といった比較サイト、自転車通販サイトなどを企画・開発・運営しているIT企業、エイチーム。ゲームと比較サイトで軌道に乗り、EC(電子商取引)事業の新設、技術情報メディアの買収と、事業領域を拡大しつつ業績を伸ばしている。枠にとらわれない新規事業のアイデアが上がってくる仕組み、新しい事業を軌道に乗せるための組織づくり・営業手法などを聞いた。
エイチームは2000年の設立以来、連結ベースで増収が続いています。経営理念の1つとして、「みんなで幸せになれる会社にすること」を掲げていますが、これが業績好調につながっているのでしょうか。
林:みんなで幸せになれる会社にすることは、エイチームで働くうえで大変重要なことですし、これが会社発展の大きな原動力になっていると思います。
みんなが幸せになるのは、実際には難しいことです。組織の中にも競争があり、そこで勝てば幸せかもしれませんが、敗れると幸せとは感じないでしょう。同じ人でも、時期によって調子が良かったり悪かったりもします。なので、みんな「が」幸せになるのではなく、みんな「で」幸せを生み出していく方向に向かっていきたいと考えています。
幸せは人それぞれですが、働くうえで得られる幸せは3つあると考えています。

株式会社エイチーム代表取締役社長。1971年岐阜県土岐市生まれ。小学5年生でコンピュータープログラミングを開始。87年多治見市立多治見中学校卒業後、ソフトハウス、飲食店でのアルバイトや新聞配達、学習塾の経営などを経て、97年に個人事業としてソフトウエアの受託開発を開始。2000年に有限会社エイチームを設立、代表取締役社長に就任、現職。04年に株式会社に組織変更。12年に東証マザーズ上場後、史上最短の233日で東証1部へ市場変更(写真:森田直希)
1つは「みんなから必要とされる存在であること」です。人間が絶望してしまうのは、自分は世の中に不要と感じたときだと思います。会社の仲間に必要とされる、そして社会、お客様に必要とされる。こういう状態にあることがまず、幸せだと思います。
もう1つは「金銭的に裕福であること」です。人間が犯罪に手を染めるときは、恋愛や宗教、金銭など多様な要因が絡みます。ですが、もとより金銭的な不安やトラブルがなければ、これらが大きな問題としては表れてこないのです。
3つ目は「幸せにしたい人を幸せにできること」です。例えば、自分がふがいない状況に置かれていたら、親孝行したくてもできないでしょう。配偶者や子供を幸せにできていないとなると、心がすさみます。自分自身に怒りを覚えるような心理状態です。幸せにしたい人を幸せにできる状況にあることは幸せです。
ちなみにこの3つ目の状態には、みんなから必要とされ、金銭的に裕福であれば、おのずと至ると思っています。
相手を認めれば自分も認められる
金銭的な面は業績を上げることでかなうのだと思いますが、社員一人ひとりはどのようにすれば会社の仲間から必要とされるのでしょうか。
林:それは相手に対して親切にしたり助けたりすることです。
誰しも嫌なことをされれば、嫌なことをした人に嫌な気持ちを抱きます。相手の悪いところばかりを見ていては、相手も同じように自分に対して悪いところばかりを見るのです。このような人間関係では、お互い必要とは思いません。
その逆で、相手の良いところを見付けて受け入れ、親切にしたり助けたりすると、今度は相手が自分に対してそうしてくれるようになります。相手を認めることで、自分も周りに受け入れられ、認められるのです。
経営理念を浸透させるため、このような話は普段から社員に話しています。
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