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1919年に革製品販売を始め、戦後は主にランドセルの製造販売に特化していくことで業績を伸ばしてきたセイバン(兵庫県たつの市)。先代時代に発明された背負い機構「天使のはね」や多彩なデザインが受け、小学校への新入学を迎える約100万人に対し約30万個を製造販売している。4代目トップの泉貴章氏が社長就任早々、ネットでの安売りの危機に遭うが、製造と販売面で対策を施し現在に至る。次の100年を見据えた今後を聞いた。

まずセイバンの顧客について伺いたいと思います。翌年に小学1年生になる年長さんたちがターゲットになりますね。


:そうです。市場のことをお話ししますと、少子化が進んでいるとはいえ、毎年およそ100万人がランドセルを新たに背負うことになります。私たちは毎年約30万個を製造販売していて、シェアは30%ほどの計算です。

 お客様はカタログやWebサイトを中心に、ランドセルのデザインや機能、素材などいろいろと調べられたうえで、実際に店舗で実物を見たり背負ってみたりして購入されています。

 私たちは、子どもの体に負担をかけないランドセル、「天使のはね」ブランドの広告宣伝に注力していて、長年、テレビCMも打っています。今は、お母さんたちに人気のDAIGOさんをキャラクターに起用しています。そのおかげでお客様からの認知度はかなり高いのです。

 ランドセル選びの際、私たちの商品を候補に挙げていただく機会は多く、本当にありがたいことと思っています。

泉貴章(いずみ・たかあき)
株式会社セイバン代表取締役社長。1974年兵庫県生まれ。大阪大学工学部大学院卒業後、サントリーにて商品開発や工場の品質管理に携わり、2010年10月セイバンに入社。11年2月から現職(写真:清水真帆呂)

 多くのランドセルの中から、どのように1つを選んでいるかと言えば、お母さんは耐久性、背負いやすさや軽さ、お子さんは色やデザインを重点的に見られています。今は、お金を出すのは祖父母、実際に買われるのはご両親というケースが多いですね。

“子ども想い品質”のランドセルを製造販売


ブランド力はあるとしても、ランドセルという商品の差異化は難しそうです。


:天使のはねについて、少しご紹介しますと、重いランドセルを背負っていると、ランドセルが後ろに引っ張られるようにずれていきます。それを防ぐために肩のベルトを立たせ、背中の中心でピッタリ支えられるのが天使のはねの機構です。重い荷物でも軽く感じられるのです。

 天使のはねは、先代である私の父の、専務だった弟がお遍路に行ったとき、お遍路さんたちがいろいろと背負う荷物を見て、あれをもっと軽くできないかと考えて作られたものです。3年ほど試行錯誤して完成しました。発明ですね。

 その後も、ランドセルの背の部分が、曲線的に子どもの体にフィットするような形状にし、より負担を掛けないようにするといった工夫を重ねてきています。

 私たちのランドセルは“子ども想い品質”を標榜しています。体に負担を掛けないこともそうですが、ランドセルは6年間ほぼ毎日使い続けるものですし、それも、子どもたちは家族の目の届かないところで、わんぱくな扱いをすることもありますから、それでも型崩れしない、そういうランドセルを作っています。

 見た目のデザインにも力を入れていますが、ご家族がお子さんに対して思う気持ちと同じ気持ちで、見えない部分にもこだわって作っているのです。