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 「新型コロナウイルスの感染拡大は、すべての経営者にこれまでの姿勢の是非を問いかけている」。そう指摘するのは、経営コンサルタントの小宮一慶氏だ。経営の本質や原理原則を理解し、それを常に実践してきたかどうか。原理原則の徹底を怠ってきた経営者ほど、今の状況で苦しんでいるはずという。

 小宮氏が20年以上にわたり、多くの企業の経営を見てきた経験から導いた原理原則をまとめた新著『どんなときでも稼ぐ社長がやっている経営習慣36』の中から、「昭和の名経営者がやっていた習慣」を紹介する。

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。十数社の社外取締役や監査役、顧問も務める。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現 三菱UFJ銀行)、岡本アソシエイツなどを経て独立。著書は100冊を超える

 松下幸之助さんは「人が成功するために、1つだけ資質が必要だとすると、それは素直さだ」とおっしゃっています。『素直な心になるために』という本を出していらっしゃるほどです。

 素直な気持ちで相手をあるがままに見ているかどうか。これはとても大切です。頑固な人はこれがうまくいきません。打席に立つたびに三振ばかりしているなら打ち方を変えればいいと思うのですが、それまでの打ち方にこだわります。

 素直な気持ちを持っていないと、人の話を聞けなくなります。つまり、他人の知恵を生かすことはできません。世の中は非常に複雑です。経営者の皆さんが勉強熱心であることは間違いないと思いますが、それでも自分1人で考えられること、解決できることには限界があります。だからこそ、いろいろな人の話を聞いて、その知恵を自分の仕事に生かすことがとても大事になってきます。お客さまや先輩経営者から教わる。部下からも教わる。そして前向きに対応する。素直に謙虚でいるとは、そういうことです。

 この話を聞いても、経営者の皆さんはご自身のことを素直だと評価しているかもしれません。ですから念のために確認させてください。皆さんは社員が話しているときにメモを取っているでしょうか。

 私はこんなことをお話ししていながら、創業して20数年の経営者人生のうち最初の6年間は部下の話を聞きながらメモを取っていませんでした。改めるようになったのは、ある方に「小宮さん、部下の話をメモしていますか」と聞かれてから。行動が伴っていないと、誰もついてこないなと気づかされました。

あなたは、部下の話を聞くときにメモを取っていますか

 長い間、経営者としてやっていると、どこへ行っても「社長、社長」とちやほやされて、知らず知らずのうちに、視点が高くなってしまいます。しかも、少し儲かるようになったら、態度はますます大きくなる。だってお金さえあれば、レストランやホテルなど、どこへ行っても「○○様」とうやうやしく接客してもらえるのですから。

 そんな謙虚さを失った経営者は顎を上げて、肩で風を切って歩いています。けれどもそうした態度で会社を潰した人を、私は何人も知っています。