「やばいな」。それがメガネスーパーの第一印象でした。床は汚い、天井に穴が開いている。社員は暗い顔で下を向いているか、不平不満をこぼしているかでした。
当時、メガネスーパーは格安眼鏡チェーンの台頭で業績が低迷し、債務超過に陥っていました。2012年からは投資ファンドのアドバンテッジパートナーズの下、経営改革を進めていましたが、業績は上向かなかった。

1966年生まれ。早稲田大学卒業後、三井物産に入社。スイスにあるビジネススクール、IMDでMBA取得後、フラー・ジャコー、ブルーノマリなど外資系企業の日本法人トップを務める。2011年からはアパレルメーカー、クレッジの経営再建に手腕を発揮。13年6月メガネスーパーに入社、同年7月から現職。8期連続赤字からのV字回復を果たす(写真/鈴木愛子)
そこでアドバンテッジが社長として白羽の矢を立てたのが、他社で経営再建の実績があった私だったのです。13年5月のことでした。
いくつかの企業で社長を務めてきたので分かるのですが、メガネスーパーは駄目な会社の典型でした。本社の幹部社員は時間通り会議に来ないし、何も決めない。何かと言えば現場のせいにする。
幹部社員が実際の現場を理解しているとはとても思えなかったので、自分の目で確かめようと「直轄領」をもらうことにしました。
もちろんいい顔はされません。このとき任されたのは新宿、有楽町、吉祥寺、横浜、厚木、小田原の6店。社長直轄の「天領店」です。いずれも大型の旗艦店でした。
今振り返ると赤字が大きく、“面倒くさい”店長や副店長がいる店を押しつけられたような気がします。
黒船ペリー状態
最初の数カ月はつらいことだらけでした。社員はこちらの言うように動いてはくれません。前職の会社から何人か連れていったのですが、既存社員からみれば我々は進駐軍。完全に黒船ペリー状態です。もう四面楚歌(そか)どころか、八面楚歌の気分でした。
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