SNSは比較的、新しいツールですが、ビジネスに活用するときの手法は、基本的に昔からあるPRと同じ、と、私は考えています。

 PRというと一般的には、テレビや新聞、雑誌などに「うちの商品、サービス、会社を、番組や記事で取り上げませんか」と、ご提案する活動のことでした。

 その特徴は、広告と比較すると分かりやすいと思います。

 広告とは、「うちの商品、サービスって、いいですよ!」と、「自薦」する活動です。それに対して、PRは、自分以外の第三者に「ここの商品、サービスって、いいよね!」と、「他薦」してもらうための活動です。

 SNSで認知度を上げるとは「いいね!」を集めること。すなわち他薦を集める活動ですから、PRと同じです。

 つまり、多くの人が今、感じている「SNSで認知度を上げたい」という望みは、「PRで認知度を上げる」ことと、ほぼイコールなのです。

 しかも、SNSでは、売り込むべき相手は一部のメディア関係者に限られません。今やSNSで情報発信するすべての人が、PRする価値のある媒体を持っていて、PRの持つ可能性は大きく広がりました。

 もちろん、SNSには昔ながらのPRツールとは異なる特徴もありますが、PRの基本セオリーを押さえれば、ずっと分かりやすく、活用しやすくなります。SNSに多くの人が感じる不安はかなり解消されるはずです。

 PRというと、一部の専門職の人が学ぶスキル、と、思う人もいるかもしれません。確かに昔はそうだったかもしれません。しかし、これからの時代、PRのスキルは、あらゆる個人が身につけるべきスキルだと、私は強く思うのです。何しろコスト0円で、効果は無限大です。

山形大学工学部からアイシン精機へ

 ここで話を、エアウィーヴに戻しましょう。

 私が、PRと出合ったのは、2009年、25歳で、寝具ベンチャー・エアウィーヴの第1号正社員になったときです。

 もともとは理系で、山形大学工学部卒業後、トヨタグループのアイシン精機で研究開発職に従事していました。工学の勉強は大好きで、大学を卒業するときには日本機械学会畠山賞をいただき、機械システム工学科で「人格、学業ともに優秀」な2人に選ばれました

 けれど、大企業での研究開発には向いていなかったのかもしれません。入社して数年すると、何か物足りないものを感じ始めました。自分の仕事が会社にどう貢献しているのかがダイレクトに伝わってこない。仕事の手応えがいまひとつ感じられない。

 そんなもやもやした時期に出会ったのが、エアウィーヴの創業者、高岡本州(もとくに)社長でした。

※ 私には「山形大学工学部機械システム工学科を、実質的に『首席』で卒業した」という自負があります。成績表がほとんど「優」だっただけでなく、日本機械学会畠山賞を受賞したもう1人である山下純君からも「確かに郁乃ちゃんは主席だったよ。間違いないです」との証言を得たからです。こんな話をわざわざするところからもお察しいただける通り、私は結構な負けず嫌いです(苦笑)。

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