大学でギリシア語を教えていた時、教師である私は学生を評価しなければなりませんでした。学生の訳が正しければ正しいと、間違ったら間違っているといいました。これは評価であり、正答した学生をほめるわけではありません。間違えた学生には間違いであることを指摘しますが、叱るわけではありません。

 学生が間違えた時もほめなければならないと教師が思って、学生の評価に手心を加えたり手加減したりするのはおかしいでしょう。間違いを教師に指摘され落ち込む学生はいるかもしれませんが、学生は次回間違うことがないように勉強すればいいだけのことです。

失敗の痛手を上司が和らげなくていい

 仕事の場面で部下をほめると、取ってつけたようなおだてだと思うでしょう。

 失敗が目立ち、成績がよくない部下に対して、「評価に手心を加えれば意欲的に仕事に取り組むだろう」と考えて部下をほめると、自分が対等に見られていないと思うでしょう。

 自分でも思うような結果を出せなかったことを知っているのですから、叱ることで追い打ちをかけなくてもいいですし、失敗したことによる痛手を上司が和らげようとしなくてもいいのです。

 このような時、ほめてくれた上司を「優しい」と思うというより、「自力では失敗を挽回できないと思われている」と考え、いよいよ自分に価値があるとは思えなくなるでしょう。

 上司はただ評価をすればいいのです。公平に評価されたら、たとえよくない評価であっても、部下はよりよい結果を出す努力をするでしょう。

たとえ評価が低かったとしても、公平な評価であれば部下は発奮する(写真=PIXTA)
たとえ評価が低かったとしても、公平な評価であれば部下は発奮する(写真=PIXTA)

(この記事は、「日経トップリーダー」2018年6月号の記事を基に構成しました)

『嫌われる勇気』の岸見先生と一緒に悩みを解消
「岸見一郎先生 対話会」を12月に開催します

日経トップリーダーの人気連載「リーダーシップの誤解」の著者である、哲学者の岸見一郎先生。ベストセラー書籍『嫌われる勇気』は国内外でたくさんの人に読み継がれています。今回、岸見先生と企業経営者による対話会を開くことになりました。経営者の悩みに、岸見先生が道筋を示します。3時間以上の濃密な対話を通じ、あなた自身のリーダーシップの形を見つけてください。

こんなことを岸見先生と相談できます。

・新入社員が入ってきました。言われたこと以上のことをやろうとしません。「おれが若い頃は……」とつい思ってしまいます。どんなふうに教育したら自ら動くようになるでしょうか。

・若手社員を一度きつく叱ったら、それ以来プイと横を向いて仕事をしなくなりました。

・父から経営を引き継いで、つい先日、社長に就任しました。父は「好きなようにやれ」と言いますが、リーダーとして社員にどう接していけばよいでしょうか。古参幹部の冷ややかな視線も感じます。

・社員に覇気がなく、沈滞ムードです。経営環境が厳しく給料は引き上げられないのですが、社員のモチベーションアップを図る方法はありますか?

皆様のご参加をお待ちしています。

<開催日時・会場>
日時 2019年 12月 9日(月)13:00~17:30 (開場 12:30)
会場 富士ソフトアキバプラザ(東京・秋葉原)
住所 東京都千代田区神田練塀町3

詳細は下記のリンクからご覧ください。
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/vs/nv_191209/index.html

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