アドラーは「自分に価値があると思える時にだけ、勇気を持てる」といっています。この勇気は、仕事に取り組む勇気です。
「私は上司から叱られたからこそ伸びた、今の自分があるのは私を叱ってくれた上司のおかげだ」と叱ることが必要だと主張する人はいます。
しかし、そのようにいう人は、もともと力がある人だったので、上司に叱られ勇気をくじかれても仕事を続けられただけであって、同僚の多くは伸ばせたはずの力も伸ばせなかったのです。
仕事に取り組んで思うような成果を収めることができなければ、上司は叱ります。叱られなくても結果を評価されることは自分の実力を思い知らされるので怖いのですが、その上、上司に叱られるといよいよ自分は仕事ができないと思うことになります。
「間違えてもできない生徒だと思わない」
私は大学でギリシア語を教えていました。ある年、学生の一人がギリシア語を日本語に訳そうとはしなかったことがありました。「なぜ、訳さないのか」とたずねたところ、「この問題を間違えて、できない学生だとは思われたくなかった」というのです。
私は「どこが理解できていないかがわからなければ教えることができない。間違えてもできない学生だとは思わない」といわなければなりませんでした。次の時間から学生は失敗を恐れないようになり、ギリシア語が読めるようになりました。
たとえ今は失敗をすることがあっても、部下に可能性を見て取り、部下の力を伸ばすために的確な指導をすれば、部下は上司から対等に見られていると思えます。

(この記事は、「日経トップリーダー」2018年5月号の記事を基に構成しました)
「岸見一郎先生 対話会」を12月に開催します
日経トップリーダーの人気連載「リーダーシップの誤解」の著者である、哲学者の岸見一郎先生。ベストセラー書籍『嫌われる勇気』は国内外でたくさんの人に読み継がれています。今回、岸見先生と企業経営者による対話会を開くことになりました。経営者の悩みに、岸見先生が道筋を示します。3時間以上の濃密な対話を通じ、あなた自身のリーダーシップの形を見つけてください。
こんなことを岸見先生と相談できます。
・新入社員が入ってきました。言われたこと以上のことをやろうとしません。「おれが若い頃は……」とつい思ってしまいます。どんなふうに教育したら自ら動くようになるでしょうか。
・若手社員を一度きつく叱ったら、それ以来プイと横を向いて仕事をしなくなりました。
・父から経営を引き継いで、つい先日、社長に就任しました。父は「好きなようにやれ」と言いますが、リーダーとして社員にどう接していけばよいでしょうか。古参幹部の冷ややかな視線も感じます。
・社員に覇気がなく、沈滞ムードです。経営環境が厳しく給料は引き上げられないのですが、社員のモチベーションアップを図る方法はありますか?
皆様のご参加をお待ちしています。
<開催日時・会場>
日時 2019年 12月 9日(月)13:00~17:30 (開場 12:30)
会場 富士ソフトアキバプラザ(東京・秋葉原)
住所 東京都千代田区神田練塀町3
詳細は下記のリンクからご覧ください。
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/vs/nv_191209/index.html
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