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 どうしたら部下に協力してもらえるリーダーになれるのでしょうか。一言でいえば、尊敬されることです。

 問題は、この尊敬は強制できないということです。「私を尊敬しなさい」といってみても、尊敬に値しないと部下に判断された上司は部下から尊敬されることは決してありません。

岸見一郎(きしみ・いちろう)
哲学者。1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の西洋古代哲学と並行して、アドラー心理学を研究。『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(ともにダイヤモンド社)など著書多数

 尊敬されるためには、まず、仕事についての知識が必須です。

 ある時、駅の窓口で電車の切符を買い求めました。何度も乗り換えなければならない複雑な経路をいうと駅員は一度で私の指示を理解し、たちまち切符が機械から出てきました。

 それを隣で見ていた駅員の若い部下が「すごい」と驚嘆しましたが、上司の駅員はただ一言「仕事だからな」と答えました。

 次に、仕事についての知識を部下に教えることができなくてはなりません。

自分が無能だと知られたくない

 例えば、道をたずねられたときに、自分ではわかっているけれど言葉で説明するのは面倒なので一緒にその場所まで行くというのでは道を知っているとはいえません。道順を言葉で説明できなければ知っているとはいえないのです。

 このように考えるとリーダーであるというのは大変なことです。

 無能な上司は自分が無能であることを部下に知られたくないので、部下を本来の仕事の場である「第一の戦場」ではなく、「第二の戦場」に連れ出します。

 そこで、仕事とは直接関係ないことで部下を理不尽に叱りつけます。時に歯向かってくる部下がいますが、そのような部下を押さえつけることができれば、いよいよ優越感を持ちます。