ある出版社の話です。
上司は部下が書く原稿が気に入らないと、自分で書き直すというのです。「そうしないと締切に間に合わないから」と言うのですが、上司が書き直してしまうと、完全な原稿にはなっても、部下は何も学べません。
どんな仕事でも部下に任せることにはリスクが伴いますが、部下を信頼しなければなりません。その上、部下が失敗したら、その責任は上司が取らなければならないのです。
アンフェアだと思う人がいるかもしれませんが、そもそも部下が失敗するのは上司の指導が適切ではないからです。部下の資質に問題があると思いたい人はいるでしょうが、リーダーはそうは思ってはいけないのです。
組織にとってプラスになること
私が十年前に冠動脈のバイパス手術を受けたとき、執刀医は3人いましたが、その中で一番若い医師が主治医でした。今は若い人がリーダーになることはどんな組織でもあることです。
そのような若いリーダーは有能でしょうが、ほかの人はリーダーの仕事に協力することが必要です。たとえ有能であっても、経験が十分ではないということはあり得るからです。
他方、リーダーは必要なときには援助を求めなければなりません。そうすることを前任者を引き合いに出して批判する人がいたとしても、自分がどう思われるかではなく、組織にとってプラスになることだけを考えなければならないのです。
部下もリーダーに「協力しよう」と思わなければなりません。次回は、部下に「協力したい」と思ってもらえるリーダーになるためにはどうすればいいかを考えてみましょう。

(この記事は、「日経トップリーダー」2018年3月号の記事を基に構成しました)
「岸見一郎先生 対話会」を12月に開催します
日経トップリーダーの人気連載「リーダーシップの誤解」の著者である、哲学者の岸見一郎先生。ベストセラー書籍『嫌われる勇気』は国内外でたくさんの人に読み継がれています。今回、岸見先生と企業経営者による対話会を開くことになりました。経営者の悩みに、岸見先生が道筋を示します。3時間以上濃密な対話を通じ、あなた自身のリーダーシップを見つけてください。
<開催日時・会場>
日時 2019年 12月 9日(月)13:00~17:30 (開場 12:30)
会場 富士ソフトアキバプラザ(東京・秋葉原)
住所 東京都千代田区神田練塀町3
詳細は下記のリンクからご覧ください
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/vs/nv_191209/index.html
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