全4181文字

地方自治体ビジネスの市場規模は約13兆円。地方創生の機運が高まる中で、多くの民間企業が地方自治体に営業に行くようになったが、なかなか新たなビジネスを切り開けずにいるケースは多い。その理由は、地方自治体の独自のルールを「知らない」から。多くの中小企業が失敗しやすい代表的な6パターンとその対策について、自治体の調達現場を知り尽くしたLGブレイクスルーの古田智子代表が解説する。

 地方自治体がビジネスの取引先として有望らしい--。

 こうした声があちこちから聞かれるようになってはや数年。折しも地方創生の機運の高まりを受け、多くの民間企業が地方自治体に営業に行くようになった。

 ところが、なぜかうまく受注に結びつかない。腕利き営業マンを投入しても、思うように結果が出ない。そして、理由が全くわからない。心当たりはないだろうか。

 そこで思い当たるふしがあるという経営者や経営幹部、管理職に向けて、地方自治体に向けて営業をするときにやってしまいがちな“失敗あるある”を紹介しよう。ここでは地方自治体への営業経験が浅い中小企業がつまずく6つの失敗パターンを取り上げながら、その理由と対策について解説する。民間と自治体との営業スタイルの違いに注目してほしい。

古田 智子(ふるた・ともこ)
LGブレイクスルー 代表取締役。慶応義塾大学を卒業後、流通業などを経て環境総合コンサルティング会社に入社。国や自治体を事業領域としたコンサルタント業、自治体職員の人材育成などに携わる。2013年LGブレイクスルーを設立。16年公民ビジネス活性化協会設立、代表理事に就任

首長には仕事を発注する権限がない

失敗パターン1 首長のパイプを得て仕事につなげようとする

 市長や知事に直接コンタクトして、自社の製品、サービスをPRしたにもかかわらず、その後の仕事につながらない。組織のトップに営業できたのに一体なぜ? こうしたケースは、自治体営業で陥りやすい典型的な失敗パターンだ。

 民間企業であれば、そのトップである社長の「鶴の一声」で、採用されることが多い。だが自治体の場合、こうした民間の事情とは勝手が違う。

 地方自治体の長である知事や市長(首長と言う)は、選挙で選ばれた地域のリーダーだ。だが、厳密には仕事を発注する権限を持つトップではない。中でも民間企業に仕事を発注する「調達」と呼ばれる分野においては、公平性の観点から、原則として首長の“影響力”を行使できない仕組みになっている。

 ところが、民間企業の多くはこうした首長の前提を誤解している。そのため何とかツテをたどって首長にコンタクトする機会を取りつけ、自社を精いっぱいアピールする。それにもかかわらず、プレゼンするだけで終わるという何とも理解しがたい結果になってしまっているのだ。

 では、地方自治体の誰が発注権限を握っているのか。それは、各課の課長級職員。民間企業の課長のレベル感とは異なり、自治体の課長級は民間でいうと事業本部長や執行役員に相当する。課長こそが追いかけるべきキーパーソンなのだ。

失敗パターン2 営業トークで押しまくる

 高いコミュニケーション能力でお客の心をつかみ、抜群の成績を残してきたトップ営業マン。どんな企業にもいるエースがあの手この手で話題を投げかけても、自治体職員の反応は思わしくない。それどころか表情に変化はなく、淡々とした答えしか返ってこない。押しの一手で成果につながるクロージングを試みるも、職員の言葉は「また機会があったらよろしくお願い致します」だった--。これも自治体営業の失敗あるあるだ。

 そもそも地方自治体の職員は、「地方自治法」と「地方公務員法」にがんじがらめにされていると言っても過言ではない。そこでは公平性と透明性が厳しく求められているため、特定の企業に情報を共有したり、仕事の発注について脈があると思われることを言ったりしてはならないのだ。

 自治体職員がつれなく対応する理由は、彼らに課せられている厳しいコンプライアンスの順守にある。もしも地方自治体に営業をするならば、そうした背景を知った上で、さらに組織独特のルール、例えば仕事の元手となる予算の仕組みやスケジュール感などもリサーチしておくといいだろう。