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3年前まで倒産寸前だった東京都八王子市の小さな町の電器店が復活。売上高、粗利率ともに1.6倍に伸びた。V字回復の処方箋は「顧客をおよそ半分に絞り込む」という大胆な決断だった。購買頻度と累計購入額でマトリクスをつくり、累計購入額と購買頻度が高い得意客から順に訪問営業を実施していった。

(前編はこちらから)

 1カ月にわたって悩み抜いた末、東京都八王子市にあるパナソニック系列の電器店「パナピット イトウ」(現ライフテクト イトウ、以下イトウ)社長の伊藤直樹が顧客の絞り込みを最終的に断行した理由は、何も手を打たなければ、いずれ経営が行き詰まることが予測できたから。それならば成功体験のあるヤマグチの社長である山口の助言に従って、会社の未来のために行動すべきと自分に言い聞かせた。

 顧客数を絞る以上、得意客に丁寧なサービスを提供し、値引きしなくても納得して買ってもらう方針を貫かなければ後はないと覚悟を決めた。

訪問営業車に乗るライフテクト イトウの伊藤社長。アドバイスを受けた東京都町田市の家電店ヤマグチに倣って、車の外装をゼブラ柄にしている(写真=菊池一郎、以下同)

購入実績で顧客を絞り込む

 顧客の絞り込みを伊藤は次の方法で実行した。まず、これまでの販売履歴を記録した顧客台帳を見ながら、過去5年以上購入実績がない顧客を抽出。訪問営業をやめる候補とした。

 訪問営業のエリアも絞り込んだ。八王子市内を中心に、基本的には車で片道1時間以内の場所に住む顧客のみとした。

 仮にこれらの絞り込みを機械的に実行すると、顧客台帳にある約1500世帯のうち、半分に相当する約750世帯にまで減る。ただ、伊藤の父が「どうしても」とこだわる古い付き合いの顧客などは残し、まず約800世帯に絞り込むことにした。

 さらに、この800世帯を購買頻度と累計購入額の多寡に応じて9つに分類。誰が得意客かを明らかにした。

 具体的には、購買頻度は過去1年以内、過去2~3年以内、過去3~5年以内に購買履歴があるかどうかで3区分。累計購入額は100万円以上、30万~100万円未満、30万円未満に3区分したマトリクス図をつくり、それぞれに顧客を当てはめた。

 そうして、累計購入額と購買頻度が高い得意客から順に、集中的に訪問営業を実施。その際、電球の取り替えやデジタル家電の操作の仕方など、ちょっとした困り事にこれまで以上に丁寧に応じるようにした。代わりに値引きはやめ、粗利率が40%確保できる価格で恐る恐る売ってみた。