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時代の大きな流れを捉える方法として、田所さんの著書にも「PEST分析」の話が出てきます。政治、経済、社会、テクノロジーという4つの大きな流れをつかんで、そこからビジネスのヒントを得ようという発想です。働く女性の環境変化という社会の流れから、エアークローゼットが生まれたのでしょうか。

天沼:そうですね。エアークローゼットの形に結び付いたのは、社会環境の変化が一番大きかったと思います。

 それと、テクノロジーの変化による、社会の変化も重要でした。

 私は小さな頃からパソコンが大好きでした。小学校の頃からパソコンを使っていて、当時は56kbpsのモデムを使って「ピー、ガー」と通信をしてインターネットにつなぐ時代。ですから、インターネットを使っているのはごく一部の人でした。

 それが、私が社会人になったときには、スマートフォンが普及してきて、モデムの頃と比べて、情報の受け取り方、伝え方がガラリと変わったと感じました。マスメディアが伝えるばかりだった情報を個人もどんどん発信できるようになった。

 誰もが情報を発信するようになると、当然選択肢が増える。そこで、僕らは情報の取捨選択に無駄な時間を使いたくない人に向けてサービスを提供しようと判断したんです。

 ですから、この段階で、情報の取捨選択を楽しむタイプの人はターゲットにはしないと決めました。

エアークローゼットのレンタルは、登録ユーザーの利用履歴に応じて、スタイリストが服を選んで届ける仕組みなので、あふれる商品や情報の中から新しい出合いが生まれやすい(出所:エアークローゼット)

ターゲットを絞ると成果が分かりやすい

田所:働く女性に子供が生まれると、その人生は新しい節目を迎えます。節目を迎えるごとにこれまでとは全く異なる情報が必要になり、今まで習得していた情報の集め方や情報を集めるネットワークが通用しなくなることも多いのではないでしょうか。その不安定な状況を捉えたからこそ、うまく女性に訴えることができている。

 エアークローゼットは、性別や世代に関係なく展開できるビジネスだとは思うのですが、最初に働く女性、子育てを始める女性とファッションの関係に注目したところが素晴らしい。

 老若男女すべてをターゲットにすると、考慮すべき変数が増えます。すると、サービス提供によってその人を本当にハッピーにできたのか、ユーザーの心に刺さるサービスになっているかを判断しにくくなってしまうのです。

 アイデアは同じでもどこにターゲットを絞るかが重要になる。人生の節目を迎えるタイミングを狙うのもそうですし、情報を得るのが早いアーリーアダプターだけに絞る手もあります。

 もう1つは、大きな時代の変化があったときを狙う。規制緩和などで状況が変わると、それに合った情報を求める人が増えます。

変化をチャンスにするということですね。

田所:そうです。社会状況の変化とか、規制の緩和が起きると市場に混乱が生じる。例えば、不動産業界なら賃貸契約の重要事項説明を対面で行うことが以前は必須でしたが、今はネット経由でも行えるようになりました。

 すると、不動産の賃貸は店舗を構えずに、ZoomやSkypeを使ってテレビ会議でできるようになる。そこに新たなビジネスモデルが生まれる余地が出てきます。そのときに、一番優れたUXを提供した人が勝つ。そのスピード感が重要ではないでしょうか。(次回へ続く)

(2018年2月、東京都内で開催したイベントの内容を再構成した)

【講師の添削付き】新規・既存事業の育成・強化セミナーを9月に開催
 

 人口減少をはじめ、中小企業を取り巻く経営環境はここ数年で大きく変化し、長年続けてきた事業の停滞に悩む経営者が増えています。9月25日(水)に開催の本セミナーでは新規事業を生み育てるポイント、既存事業に新たなアイデアを加えて利益を賢く創出する発想法を詳しく伝授します。

 ベストセラー書籍『起業の科学 スタートアップサイエンス』の著者で、新規事業開発支援を手がける田所雅之氏の講演やワーク、オンライン・ファッションレンタルのエアークローゼット天沼聰社長の講演を通して、時代の変化に即した事業の見つけ方・育て方を学びます。


本講座の特徴

・事業のアイデアや売りとなる魅力を見つける「発想力」「視点」が身に付く!

・新規事業の育て方だけでなく、既存事業を強化する方法も分かる!

・受講者が会場のワークでアイデアをまとめたリーンキャンバスを後日、田所氏が添削してお返しします!

田所氏(左)と天沼氏(右)

 詳しい内容は以下のリンク先をご覧ください。

■【講師の添削付き】新規・既存事業の育成・強化セミナー