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働き方改革の一環として、多くの企業が生産性の向上に取り組んでいるだろう。その実現に向けてはIT化やAI(人工知能)の導入を思い浮かべる経営者は多いが、「それ以前に、現場で改善できることはまだまだある」と経営コンサルタントでビジネスミート代表の野田宜成氏は語る。職場の働き方を変えるためには、まず初めに基礎的なビジネススキルを学び直すことがとても有効だという。

野田宜成(のだ・よしなり)
ビジネスミート代表。神奈川大学卒業後、日産車体に入社。エンジニアとして品質向上、生産効率の改善に従事。船井総合研究所を経て、2008年にビジネスミートを設立。

「働き方改革」を実現するには日ごろの労働生産性を向上させることが欠かせませんが、どの企業も思うような成果が出ていないようです。

野田:働き手の多くは、これまでに習慣化した仕事の進め方を変えることが難しく、加えて過去の成功体験にも縛られやすい。例えば、営業の締め日ぎりぎりまで本腰を入れて仕事に取り組まず、いつも追い込みでノルマを達成することが常態化している人は、それで切り抜けている「成功体験」がある。こうした習慣が一度定着すると、変えるのはとても難しい。なぜなら、人間はやり慣れた方法が楽で、面倒は避けたいとする心理が働くためです。

生産性向上には仕組み化が欠かせない

組織の中で仕事の進め方が人によってあまりに違うと、管理する側は運営もままならなくなりそうです。

野田:その通りです。組織の長の運営方法によって風土はある程度は変えられますが、一人ひとりの仕事の進め方まで変革させることは難しい。しかし、働き方改革の実現に向けた生産性の向上に求められている条件は、例えば、これまで残業時間を含む10時間の勤務時間でこなしていた仕事を、これからは8時間以内で終えること。それには仕事の進め方を根本から見直す必要があるのに、これまでの取り組み方の延長で解決しようとしている。多くの企業で生産性の向上が進まない要因がここにあります。

生産性が上がらない原因は、従来の働き方を変えられない姿勢以外にもありますか。

野田:多くの企業をコンサルティングして気がつくのは、働き方を変えたくない心理的な要因のほかに、経営者以下、管理職や組織のリーダーが「精神論」を持ち出してしまうことにもあります。根性や気合で変えようとするのです。

 精神論は大切ですが、生産性を上げていくためには仕組み化が必要です。気合は長期にわたって維持できないし、それだけでは心身ともに消耗してしまう。気合を入れなければパフォーマンスを発揮できない状態では、安定して成果を上げにくくなります。