尾原:仮説思考が大事なんですね。

田所:そうですね。その典型的な例がクラウドワークスでしょう。仕事を受ける人と依頼する人がいる両サイド型で難易度が高いといわれていたクラウドソーシング市場で、同社はサービス開始からわずか2年9カ月で上場しました。

 ニワトリと卵の関係を解消するために、吉田浩一郎社長はまずすご腕エンジニアが集まるハッカソン(集中的にプログラミングを行って、成果を競い合う催し)に顔を出し、会場でピザを配りました。わずかなピザ代の代わりとして、最後に短いプレゼンテーションをさせてもらい、クラウドワークスとはどんなサービスかを説明してエンジニアを集めたそうです。

 それを10回繰り返してハッカーレベルのエンジニアを30人集めたところ、それを知ったエンジニアが1300人集まった。その実績をもって企業を回ったら30社が登録してくれた。こんな繰り返しでプラットフォームサービスの立ち上がりを加速させたのです。

小さな市場をまず取り切る

尾原:クラウドワークスの場合、需要の高いITエンジニアをピンポイントで攻めたことも大きいですよね。

田所:そうです。これがまさに次のポイント。「局地戦で勝て」です。ピーター・ティールの言葉を使えば、限定的な市場を徹底的に取り切ってから横展開しろと。例えば、メルカリが最初に攻めたのは「(先行していたフリーマーケットアプリの)『フリル』を使っている20代の口コミ力が高い女子」。この層を取り切ってからCMを打って拡大に動きました。

 ここでいう「市場を取り切る」とは、ティッピングポイントを超えること。ティッピングポイントとは、ある一定の値を超えると物事が急に動き出す時期、時点のことです。
 具体的には、狙った市場の中でフリーマーケットのユーザーが満足できるレベルまで、売り手と買い手のマッチング率を高めることです。検索して選択肢がほとんどなかったら二度と使いませんからね。

プラットフォームビジネスは、サービスの出し手と受け手という両サイドのユーザーを同時に魅了しなくてはならない難しさがある
プラットフォームビジネスは、サービスの出し手と受け手という両サイドのユーザーを同時に魅了しなくてはならない難しさがある

尾原:フェイスブックがハーバード大学限定で始まり、名門大学を1校ずつシェアを取り切ってから次の大学へと拡大させていった話は有名ですよね。

田所:そうですね。局地戦のメリットはマッチング率を高めやすいことだけではなく、ビジネスがまだ小さいうちにサービスをしっかり検証してチューニングしていけることにあります。

 サービスを検証するポイントは「Who(誰に?)」や「Where(どこで?)」だけではなく「When(いつ?)」という要素も重要です。つまり、イベントのタイミングに合わせることです。エアビーアンドビーがPMFを達成したのはコロラド州のデンバーで米国大統領選の演説会が行われたとき。1つの街に多くの人が集まってホテルが足りなくなっていたのです。

 このように、プラットフォームを成功させる秘訣はエントリーする市場を戦略的に定義して、いきなり全方位的にやらないことです。ティッピングポイントを超えて成長を始めてから、大きな成長を狙うという2つの段階を踏むのが定石です。

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