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『起業の科学 スタートアップサイエンス』(日経BP)の著者でスタートアップ支援を手がける田所雅之氏と、『アフターデジタル』(日経BP、共著)の著者でネットビジネスの現状に詳しい尾原和啓氏が、6月27日(木)に東京都内でトークイベントを開催。オンラインとオフラインが融合する「OMO」(Online Merges with Offline)時代のプラットフォームビジネスについて語り合った。後編となる今回は、プラットフォーム立ち上げの極意について。まず局地戦で勝つことを目指すなど、いくつかの定石があるという。(前編はこちらを参照)

田所:皆さんはトヨタ自動車と米フェイスブックの時価総額をご存じですか? トヨタは22兆円で、フェイスブックは60兆円です。PER(株価収益率)で見ると、トヨタは8倍で、フェイスブックは20数倍。でも、トヨタの売上高はフェイスブックの5倍あるのです。

 これはどういうことかというと、プラットフォームビジネスの資本効率性がいかに高く、なおかつ将来性が期待されているかということです。20世紀までは生産量がものをいう「範囲の経済」でしたから、大きな設備を持つB/S(貸借対照表)の分厚い(総資産額が大きい)製造業がエライといわれてきたわけですが、時代は変わりました。

 私はGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のB/Sをチェックしていますが、本当にペラペラです(編集部注:例えば、フェイスブックの総資産額はトヨタ自動車の5分の1ほど)。目立つのは自社ビルと買収した企業ののれん代くらいです。プラットフォームビジネスは、在庫を持たない情報工場であるということをつくづく実感させられます。

田所雅之(たどころ・まさゆき)
1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングに従事。独立後は日米でスタートアップを立ち上げた経験を持つ。現在は、国内外のスタートアップ支援を手がけながら、ウェブマーケティング会社のベーシックでCSO(最高戦略責任者)を務める。また、2017年にはスタートアップ支援のユニコーンファームを設立した(写真=菊池一郎、以下同)

尾原: PERの話を補足させてもらうと、PERが8倍ということは「今の利益水準のままだったら8年で終わるんだろうな」と株主に思われている、ということです。例えば、同じクルマ関連で言えば、米ウーバーテクノロジーズとトヨタのどちらが生き残る可能性が高そうかといったら、私はウーバーだと思います。

 トヨタが今まで強かったのは「車を買う」という目的を持ったユーザーと接続できていたからです。しかし、ウーバーの提供するようなサービスが増えて「車を利用する」という目的を持ったユーザーが増えると、トヨタとユーザーの接続が薄れ、プラットフォーマーに権力が移っていくのは自然なことです。

尾原和啓(おばら・かずひろ)
1970年生まれ。京都大学大学院修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、グーグル、楽天などで数々の事業を手がける