理論を学び解決方法を探す
ファミリービジネスの理論を学ぶことの意義は?
デニス:ファミリービジネスの理論を学ぶことは、自分たちのファミリーが今どこにいて、今後何をすべきかを明確化する手段になります。逆に言えば、理論が分からなければ問題点も分かりませんから、解決方法を探しにすら行けないのです。
わずか数日でも立ち止まって考える時間を持つことで、今後のビジネスにギアが入るとリピーターの方たちは実感しています。
どんなに優れたリーダーでも、日々問題に直面し、一つ一つクリアするうち、いつしか疲れてしまうこともあります。そうしたときに外部の人間の言葉で視野を広げ、次の荷物を持ち上げる力を蓄えることができるのです。


立場により利害関係が異なる
参加者からは、かけがえのない仲間を得たという声も聞かれました(記事末の囲み記事参照)。
デニス:特に今回は、自己紹介の時間を長く取り、それぞれの立場や承継への思いを共有しました。皆が同じ悩みや課題を抱えていると分かり安心感を得て、距離が縮まったと感じています。
広く世界に目を向けると、多くのファミリービジネスが存在します。互いに学び合うことで、答えを見つけることもできます。今回のプログラムがその気づきになればと思います。
IMDの2日間の授業で何を感じ、何を得たのか。参加後に自分の行動はどう変わったか。年代や立場の異なる参加者二人の言葉を紹介する。
「社長退任後の父の役割」 半導体製造業 取締役 L.H.氏(34歳)
私は3年後に父から事業を承継します。ファミリービジネスとは何なのか。永続的な成長には何が必要なのかを欧州の最新の知見から学ぼうと参加しました。こうしたことはMBA(経営学修士)では学べません。
ファミリービジネスには、会社のガバナンスと家族のガバナンスがあります。これまでガバナンスの概念が漠然としていましたが、授業に参加し、奥の深さを実感しました。個々のファミリーによって異なり、これだという正解はありません。時代や世代ごとに変化するものでもあります。
ガバナンスという面で具体的に考え始めたのは、会長になる父の役割です。明確化し、社員にとって「どちらの話を聞けばいいのか」という迷いを生む事態を避けるべきだと感じました。
授業を終えて家族で話し合い、父には、社長退任後、創業者として人材育成を担当してもらうことになりました。
今回、授業に参加し「俺たちの代で潰せないよな」と励まし合えるかけがえのない仲間を得ました。いつかスイスでの1週間の研修にも参加したいと考えています。
「承継の悩みが自信に」 製薬業 専務 I.T.氏(40歳)
事業承継を目前に、不安を抱える中での参加でした。
弊社は創業100年を超えています。ですが社内に承継の計画やガバナンスといえるものが存在しませんでした。そのために悩みを抱えることとなり、「やる人がいないなら自分がつくらなければ」と今、ルールづくりに一人苦心しているところだったからです。
IMDの授業で国内外の事例を学んだり、ディスカッションをしたりする中でガバナンスの重要性を再認識。自分がつくり上げようとしているものがファミリーの永続的な発展に不可欠であると知り、不安が自信に変わりました。
授業を終え、今では親に感謝をしています。
(この記事は、「日経トップリーダー」2019年4月号の記事を基に構成しました)
一族が経営に関わるファミリー企業の経営者・跡継ぎとなる若い世代に向け、日経トップリーダーではファミリービジネスの全体像を理解し、家族経営ならではの課題を乗り越えてもらうための新たなセミナーを始めます。
7月から開始する本講座での大きなテーマは2つ。
- ●「お家騒動」など、ファミリー企業ならではの課題を解決する方法を学び、発展に結びつける
- ●一族の中、会社の中の双方で求心力、実行力を持つファミリー企業トップのリーダーシップを学ぶ
こうした課題を7月末から10月末まで毎月1回、全4回にわたり、講義やグループワークなどを通じて学びます。
講師は、30年前からファミリービジネス向け講座を開催し、企業の幹部育成講座が世界的に評価・支持されるスイスのビジネススクールIMDの北東アジア代表、高津尚志氏。さらに、ファミリー・ビジネス・ネットワーク・ジャパン(FBNJ)の幹部として20年にわたり国内外のファミリー企業の課題解決に携わり、学術的知見を有する河田淳氏の二人。
FBNJは、世界65カ国のファミリー企業3500社、1万6000人が加盟するNPO(非営利法人)、ファミリー・ビジネス・ネットワーク(FBN)の日本の拠点です。
詳しい内容は以下のリンク先をご覧ください。
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